「二人の距離感」
〝私は、あんたの友達になりたい〟
〝だから今度は、私が与える側になる! 私がケイと一緒にいる! 私がケイと一緒に強くなる!〟
そんな大層な言葉を言い放ち、既に四ヶ月が経っている。
以後それまでの自分を思い返すたび、マリスタの心は重くなる。
(……結局、今も気まずくて声かけられてないし)
何の気なしに渡そうとしていた、リリスティア・キスキルのライブチケット。
あれを渡しそびれたときからは特に、マリスタは自分から圭に関われなくなっていた。
「……アルテアスさん?」
(いや。それまでだってそうよ)
友達になりたいと。
与え、一緒に強くなると誓ったあの日から、自分は圭に何もしてあげられていない。
(……友達以上、か。怪しいなぁ、それも)
「アルテアスさんったら!」
「はい!」
「もう、どうしたんですか急に。思いつめたような顔ですよ」
「あ、あはは。思いつめてたね、確かにね」
「え、そうなんですか? 私でよかったら聞きますよ!」
「い、いいから別に! グイグイくるわねセイカードあなた」
「アルテアスさんの真似です!」
「あぁ、私のマネね……え? マネ?」
「でも、そんなに思いつめるほど悩んでるんですね。アマセ君との関係で」
「アハハ、だからあなたが気にするような感じじゃ――」
「多そうですもんね。ライバル」
「ライバル?」
――またも過る、自分を睨むパールゥの目。
(なんなのよ……関係ないったら。私はまだあいつと友達にもなれてないんであって、……恋人、とか。そういうのはまだ、スタートにすら立ってないの)
頭に過る由無し事。
「いないよ。ライバルなんて」
それをいっぺんに追い出すために、マリスタは少し大きな声で、ケイミーの言ったことを否定した。
「えぇ~何ですかその強気な発言!!」
「違う違う。私とケイは恋人とか、そういう関係では全くないよって話」
「またまたー」
「ほんとよ」
「――……あー。ホントに?」
「ホント。ごめんねェ面白くなくってぇ~」
「う、うー……? あれ、なんか思ってた感じと違うなぁ」
「どこで聞いた噂なんだか知らないけどね。私はそんな風には思ってないの。確かにあいつ顔はいいから、勘違いしちゃうのは分かるけどね」
「だってお似合いでしたもん、美男美女カップルって感じで」
「…………セイカードこそ、そこまでこだわるってことは」
「え?」
「狙ってるの? ケイのこと」
「ぁ……いえ、私は」
ケイミーは組んだ両手を腹部でもじもじとさせながら俯き、――やがて顔をわずかに赤らめ、前を見た。
「……好きな人、いるので。カッコいいなって思いますけど、狙ってないです」
「ほほ~~ん???」
「あっ、ヤダ……やめてくださいよ冷やかすのは!」
「なァに言ってくれちゃってンのよ、人のことには散々ツッコんどいて!」
「やァあいやですいやですっ、ダメなんですそういうの! されるのは!!」
「まァちなさいこの――――ッ、」
笑いながらケイミーを追いかけようとしたマリスタが止まり。
ケイミーのレッドローブを引っ張り、背の高い観葉植物の陰に自分ごと押し込んだ。
「むぎゅ?! な、なにすんですかアルテアスさ」
「しーっ!」
人差し指を口に当てつつ、植物の大きな葉の隙間からどこかを見るマリスタ。
ケイミーもそれに倣い、――やがて大きな声で短く「あっ」と漏らす。
二人の視線の先。
そこには、派手な服装の小柄な少女から腕に抱き着かれながら歩く、ケイ・アマセの姿があった。




