「おひとよしがつごうよくつくったものがたり」
「――違うのか?」
「何かに縋ることじゃない。自分を保てなくってもいい。絶望して、何もかもをめちゃくちゃにしてしまったって、きっとその先に幸せはあると……それをまたいつか、信じ始めて欲しいってこと。自分は幸せになりたいんだって、希望を求めているんだってことを、思い出して欲しいってこと」
「………………」
「わ……分からないん、じゃないかな、それ。この話を読み込んでる人にしか」
「お人好しにも程があるな」
「え」
パールゥが俺を見る。
黙って俺に頷いたリアから、俺は目を離さなかった。
「そう。お人好しなの」
「え、何アマセ君。お人好しって、リアが?」
「違う、この物語の作者がだ。絶望し尽くした人間がいたとして、それでも幸せを求めて生きろ? 希望を求めて生きろ? 綺麗事ばかり並べ立てて大層なことだ。痛みを知らない、光にしか生きなかった人間だけが口に出来る戯言だ。こんなもの」
「……なんで怒ってるの?」
「怒ってない。ただ明確に否定して、拒絶して。少しでも遠ざけておきたいだけだ」
「私はこんな風に生きたいと思う」
リアの目が凛と俺を見据える。
俺の濁った瞳が映って見えそうな程に輝く、黒い目。
眩しい奴だ。
「そうか。どうぞご勝手に、だ。とにかく俺はそんなものに共感しない」
「そっか…お人好しにも色々いるんだね」
「おい待て。誰がお人好しだと?」
「あ、アマセ君?」
「君だよ」
「馬鹿も休み休み言え。なんで俺がお人好しに――」
「君の今までの行動を見て『お人好しじゃない』なんて言う人、いないと思うよ」
「な――……」
「ティアルバー君と戦ったことも。マリスタと、私たちとなんだかんだ一緒に居ることも。あれだけ酷い仕打ちを受けた風紀委員の人たちに、勝利を笠に着て接しないことも。私は、全部君の優しさだと思う。……だから、解ってくれると思ったのだけど」
「いいや。俺には解らない。勝手に買い被るな。俺はそんな聖人君子にはなれない。……人間はそんなに大層な生きものじゃ無い」
「そう。じゃあいいよ。そうして否定を乗せて演じるのも、それはそれで味が出るはずだから。解釈出来てないよりずっといい」
「…………」
……本心だった。
本心でなくてはいけなかった。
だってそんなものを理解してしまえば、今の俺そのものを否定することにもなりかねないから。
人間がそんなに聞き分けのいい生きものだったら、俺はきっとこんなところに立ってはいない。
ああ、くそ。
たかが劇のワンシーンの解釈ごときに、何を感傷的にさせられているのか、俺は。
「誰なんだろうね。この物語の作者って」
「……作者?」




