「しつけ」
「ゴぼ――……ッ!? が、グ、あガ――ヅ――!!?」
「おいおい――口の利き方に気をつけろってのはこないだ躾けたばかりだろ。能無し」
「うわ、きったねぇ。誰にツバ飛ばしてんだこのクソ野郎!」
「ごほ、ぉ――は、離、せ」
首にかかる圧が強まった。
もはや言葉にすらならない空気の塊が俺の口から発声される。
ここでようやく俺は、自分がテインツに首を締めあげられているのだと理解した。
突然気道を塞がれ、涙で曇る視界。片手で首を掴み、俺を軽々と持ち上げているテインツ。
馬鹿な、一体奴のどこにそんな力が――――!?
「はっはっは――……なんてザマだよ能無し。相変わらず頭悪いな君――――それだけ我々に無礼を働いて、どうして謝罪のひとつも出てこないんだよっ!」
視界が逆転する。風。振り回される脳、回転する視界、そして――――感じたことのないほど硬く、大きな痛みが背中にぶつかった。
「ぅ――――い、ぃ痛――――ぁあっ――……!!」
慌てて周囲を確認する。目元から流れた涙のお陰ではっきりと見て取れたのは円形の壁。灰色の床。
「……おい、まさか」
激しい痛みに悶えながら、失笑してしまう。
信じられないことだが、どうやら俺は空いていた演習スペースの中まで――距離にして、およそ七、八メートルか――投げ飛ばされてしまったらしい。
なんだ、その力は。
「おいおいテインツ、やりすぎだぜ。英雄の鎧も使ってねぇ奴を。下手すりゃ死ぬぞ」
「おっと、そうだったな、うっかりしてた……まさか義勇兵コースに所属しておいて、英雄の鎧も使えない能無しがいるなんて、思ってもみなかったものだから」
「ちげぇねぇ。もっとちゃんと勉強しろよ、ガイジン!」
ヘロス・ラスタング。
テインツのこの力は、その魔法の影響という訳か。それもこいつらの話からすると、義勇兵コースに所属する者にとっては必須の魔法。
痛みが響き続ける体をゆっくりと起こし、俺はテインツに向かい合う。
テインツが目を細めた。
「……まだ解らないのか。能無しも大概にしなよ。君は頭が高すぎるんだ、リシディアの担い手たる貴族に対して。大体」
「どうやるんだ?」
「君が義勇――なんだって?」




