「双剣――――猿は異世界に手を伸ばす」
両手に一振りずつ握られた湾曲剣鎌剣は、奴が魔力切れの中にあっても尚、濡れた黒を輝かせるようにして俺の前に立ちはだかっている。
そこで、やっと気付いた。
ああ、なんてバカ。
俺はまだ、奴と対等じゃなかった。
「…………」
「ッ……さあ、どうする。もう終わりか? 終わりなのか、ケイ・アマセッ」
息が五月蠅い。
魔力の流れに途切れを感じる。
万策は既に尽き果てた。
使える魔法もきっと多くない。
ナイセストがゆらりと体を起こし、膝を屈する俺に微笑みかけてくる。
その眼光に、未だ翳りは見られない。
「――――終わらないさ。いや、終われない」
「じゃあ見せてみろ。でないと――――終わるぞ、そらッ――――!!」
ナイセストが迫る。
バケモノだ、お前は。
でもだからこそ、テインツと戦ったあのとき、
「――目の前に、こんなにも行きたかった高みが居るんだから」
お前の剣は、強そうだと思った。
突き出した両手に、花色の魔力が収束する。
飛び散る魔光の中魔力を握り潰し、剣の形へと錬鉄する。
花色が乱れ凍結し、俺が唯一知る剣を模倣していく。
乱渦の中央に宝玉の在る片刃の剣。
その、
「ッッッ!!!」
「――――ぁあ、」
一対の、氷双剣。
「あああアアァァァ――――――ッッッ!!!」
迫り来た十五閃の斬撃を片端から打ち返す。
馳せ違う体。
振り返りかち合う目と目。
「……双剣か。事もあろうに、使い手の目の前で……!!」
その漆黒が、これまでにない興奮を湛えた。
「猿真似が――――どこまでもッッ!!!」
「ッ!!」
ナイセストに合わせ地を蹴る。
眼前に、幾百もの魔光が散る。
息を吹き返したかのように踊る、しかし確実にキレを失いつつある双剣の剣光を、手にした双剣でただ我武者羅に弾き返していく。
打つ。
風切り。
打つ。
火花。
打つ。
鋼音。
打つ。
つい昨日のことだ。
どの感触も、鮮明に覚えている――――!!
 




