「クラスメイトたち」
シャノリアが次の者を指名すると、パールゥよりも幾分背の高い女子が立ち上がった。臀部にまで届きそうなたおやかな藍色の長髪と、母性の強調されたひどく女性的なシルエットが印象的な女生徒だ。
「初めまして。システィーナ・チェーンリセンダといいます、よろしく。アマセ君は、友達が多い方? 少ない方?」
当たり障りのない問いだが、そう聞かれると少し困ってしまう。
問いそのものよりも、どこか俺がその質問に窮していること自体に興味津々なように見えるのは……気のせいなんだろうか。
そんな半分本気な苦笑を浮かべつつ、システィーナに応じる。
「友達は多い方じゃないかな。同年代が少ない場所に住んでいたから……だから、こうして同い年くらいの人が多い学校に転入することが出来てすごくワクワクしてるよ。こちらこそよろしく、システィーナ。……皆にも迷惑をかけると思うけど、仲良くしてくれたら嬉しい」
不自然でない限りに、リップサービスを振りまいておく。反応を見るに、成果は上々だろう。
マリスタの顔は一段と険しくなっている気がするし、何人かはうさん臭さに気付いているようだが、これで教室での「顔」は大体完成したはずだ――学校生活に支障がない範囲で。
後は黙々と日々を過ごすだけだ。
「ほかにも手は挙がっているけど……時間の関係もあるし、質問はここで終わりにしましょう。それじゃあ、アマセ君の席は……ナタリー。あなたの横、空いてるわよね?」
「あ、はいっ。アマセさんっ、こちらですよー」
指名された、ピンクのニット帽をかぶった女生徒がにこやかに応えつつ、手を振ってくる。俺は片手に持った茶色の皮の鞄を持って移動し、ナタリーと呼ばれた生徒の横に腰かけた。
「よろしく、ナタリー」
「ええ。よろしくお願いします、アマセさんっ」
ニコニコ顔のナタリーにこちらも笑顔で返し、机と向き合う。
幸い使い辛さのない机で、座っても特に不都合はない。ひとまず落ち着いて集中できそうだ。――通路を挟んだ隣の席からの圧力さえ解消できれば。
視線を向ける。システィーナの隣の席、そこにいるのは、不信の権化のような顔をしているマリスタ。会釈で圧力を返し、前を向く。
頼むから、俺の学生生活に妙な干渉をしてくれるなよ。
「さ……さあ。それじゃあ今日も一日頑張っていきましょう。新学期が始まったばかりだけど、来月にはさっそく中間筆記試験、そして義勇兵コースの皆さんには、二ヶ月後に実技試験もあります。油断せず準備していくように――」
「アマセ君。君、所属コースはどこなの?」




