「Interlude―2」
「いいのいいの。私は過去にとらわれない人間だから」
「マリスタはこないだの魔法理論の小テスト、どうだった?」
「赤点だったの!!!! ほんともーサイアク!!! 一週間はヘコんでる!!」
(とらわれまくってるじゃない……)
「あんたはどうだったのさパールゥ。あんただって理系科目と魔法科目高くないクセに」
「私は赤点じゃないし……システィーナはどうだった?」
「私はいつも通りかな」
「ふーんだ。頭も体も完璧女めっ」
「誉め言葉で貶さないでよ……どう反応していいか分からないでしょ」
「ふんだ。ん、そういえばパールゥ、ナタリーは?」
「え? 私、一緒じゃなかったよ?」
「あれ、そなの? なぁんだ、てっきり一緒かと思ってた」
「今日は図書館にも来なかったから。……あ、そうそう。昨日ね、図書館にすごい人が来てたんだよ」
「凄い人?」
「有名人?」
「ううん、そうじゃなくて……借りてく本の冊数が凄い人がいたの。ほとんど棚一列、貸出冊数ギリギリまで持ってきて借りていくんだよ」
「ゲ、なにそれきんも~。どんだけ本の虫なのよ」
「それはすごい人ね……何を借りていったの? 漫画とか?」
「それが違うの。私が受付したんだけど……世界史とか国史とか、魔法の基礎とか、外国人用のリシディア語のテキストとか」
――マリスタの背に、確信めいた悪寒が立ち昇った。
「ね、ねぇパールゥ。その男の子、もしかして金髪じゃなかった?」
「う、うん。そうだったけど……どうして男の子だって判ったの?」
「え。なんで男の子だって分かったの」
「ついに五秒前の言葉まで忘れたわね、マリスタあなた……」
「えっ?!?! 私また?!」
「ま、マリスタ……ちゃんと卒業できるの?」
「す、するわよ卒業くらいっ」
「それで? その金髪男子の転校生を、どうしてあなたが知ってるの? マリスタ」
黒髪を耳にかけながら、楽しそうに問うシスティーナ。三度マリスタが目をぱちくりさせる。
「えっ、なんでその男子が転校生だって……」
「だって、あなた普段男の子と付き合いないじゃない。そんなマリスタが気にかける男子となると、これは同じく気になってる様子の転校生かな、って」
マリスタは何か言いたそうに口をぱくぱくさせていたが、やがて諦めて机に突っ伏した。システィーナとパールゥはそろってため息を吐き、苦笑いした。
こうした光景も、彼女たちにとっては日常茶飯事である。
「……んでも、なんであいつはまた、そういう目立つことをするかな……ただでさえ風当たり強くなりそうなのに……」




