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「死の宣告、だから」

 ――彼にとっては、上から目線でない(たいとうな)言葉遣いそのものが、きっとかんに障っていたのだろうと分かった。

 シャノリア、マリスタ。

 何が「既に廃れた貴族制度」なのか。



「ケ、ケイ。いいからもう行こうっ。あ、あはははは、ごめんねテインツ君、また今度――」

「おかしいな。マリスタ以外からも、貴族制度はずいぶん昔に無くなったと聞いたんだが。『平民』なんて身分があるのか」

「だから解ってないっていうんだよ、アマセ君。君は王様が王位を辞したからといって、その瞬間からただの一般人になるとでも思ってるの?」



 ……ああ。なるほど、理解した。そういう感じなのか。

 制度は消えた。だが、一度制度に縛られた人の認識や心は、そう簡単に変わらない。

 貴族制度が消えた今でも、一部に残ってるんだ。貴族をうやまい、そして――平民をけなす。大方、そんな風潮が。



「僕とアルテアスさんは貴族。そして君は聞いたところ『平民』で、何の力も後ろ盾も持っていない――――気安く(・・・)アルテアスさんに(・・・・・・・・)並び立つなよ(・・・・・・)。誰をどう敬い従えばいいのか、わきまえなって、ちゃんとさ。そういうことがしっかり出来ないとアマセ君――あっという間に死んじゃうかもしれないよ?」

「……死ぬ、か。随分ずいぶん

大袈裟おおげさだって? つくづく解ってないな。君の国がどうだったか知らないけどね、ここでは君のように何の価値もない『平民』は、遅かれ早かれ殺すか殺されるかの世界でしか生きられなくなるんだよ。例えでも何でもない。狼は生き豚は死ぬ――僕らは生き、君は死ぬんだ。賭けてもいい。そのままじゃながくとも、君の命はあと一年(・・)だよ」

「――――」



 隠す気配もなく。

 堂々と、貴族(しょうねん)平民(おれ)を見下し、神のように死を宣告した。



 ――その姿が俺の命を狙った赤髪の男に重なって見えた理由は、すぐに解った。



 忘れかけていた。ここが俺のいた世界とは違う、異世界いせかいであったことを。

 俺が今いる世界は、傭兵ようへいが街を歩き、学校の警備員が武装し、魔法陣でワープ移動しなければ魔物や盗賊に襲われる。そんな、ファンタジックな世界だった。



「あ、あのさあテインツ君! 私、そういうのやめよってこないだも――」

「僕も前に言ったでしょ、アルテアスさん。自分がどういう人間なのか考えて行動すべきだって。君が付き合うべきは平民でなく、僕らのような――」

「そうだな。あんたの言う通りかもしれない」

「…………え」



 マリスタが顔から表情を落として俺を見つめた。

 俺は彼女から、冷たい目をこちらに投げる少年に視線を移す。



「あんたは正しいよ。『郷に入っては郷に従え』、と言うしな」

「ご……何だって?」



 ひとまず、プレジア(この世界)で生きることは出来るようになった。なら、もう大貴族(マリスタやシャノリア)に、わざわざこちらから接する必要もない。

 入学は決めたが、明日にもどうなるか分からない身だ。必要以上の接触は避けた方が、俺にとっても断然いい。

 だが。これだけでは足りない。



「これまでは彼女の手を借りないと生活もままならなかったが、落ち着いてからは分をわきまえて暮らすことにする。そして、前言を撤回させてもらおう。――俺は魔術師コースでなく、義勇兵ぎゆうへいコースに入る」

「!?」

「な――ちょ、ケイ!!? 何言ってんの!?」

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