表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/1260

「白紙」

〝将来のこと、まじめに考えてるの?〟



 ――急に、この世界での生活に現実味が増したような気がした。



 一年後。俺はこの世界で、一体どんな魔法使い(・・・・)になっているだろう。

 先行きは、これまでずっと白紙だった。

 ……いな。今も白紙なのには違いない。

 そう確信を持たなければならないからこそ――



〝――ごめんなさい、圭。ごめんなさい――――〟



 ――一刻も早く、この世界で生きる最低限の力をつけ、魔女を探し、問いたださなければならない。

 「なぜ、俺だったのか」と。



「自分の適性を知る、なんて言うけどさ。所有属性エトスじゃあるまいし、そうそう適性なんて分かんないよねー。なはは、私の適正ってなんなのかしら、って感じ」

「そうだな」

「でも、家を継ぐってのも全然想像できないし、ていうかしたくないし。商売とか経営とか、聞いても全然分かんないし」

「商売……アルテアス家がやっているのか?」

「うん。うちの家、おっきい『ギルド』をやっててさ。それを継げって父さんがうるさいのなんの。プレジアの副理事長もやってるから、手が回らないみたいで。母さんにでも任せればいいのにさ」

「……副理事長(・・・・)?」

「え? あれ、言ってなかったっけ。私の父さん、プレジアの副理事なの。プレジアが立つときにお金出したんだって」

「…………」



 ……こいつが貴族のボンボンなのは把握した。



「親の言われるがまま、っていうのもなんかヤだし。かといって、特にやりたいことも思いつかないし。そんな感じでフラフラしてたら、あっという間に卒業の年が来ちゃってさ……アハハ。なっさけないよねぇ」

「そうだな」

「ちょ……そこはフォローしてくれるとこじゃないの?」

「気休め言っても何にもならないだろ。はたから見ればお前は情けないし勿体もったいない。大貴族の生まれで金持ちで――可能性は誰よりも持っていそうなのに」

「…………」



 どんな返答を期待していたのか、半笑いのまま片方の眉根まゆねを寄せて言葉を失うマリスタ。少々辛辣(しんらつ)な気もするが、別段こいつに情けをかけてやる義理もない。



『やあ、アルテアスさん』



 そんな沈黙を破るように、人当たりの好さそうな茶髪の少年がマリスタに声をかけてくる。マリスタは生返事を返しながら彼を見て、一度目をしばたかせた。



「テインツ君じゃない。どうしたの、休みの日にいるなんてめずらしいね」

『ちょっと、風紀の仕事があってね。ところでさ――』



 テインツと呼ばれた少年が、左腕の腕章わんしょうを指して何やら言う。

 ――と。その目がスッと細まり、俺の方を向いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ