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「遭遇、」



〝――ごめんなさい、圭。ごめんなさい――――〟



「覚えがないですね。すみません、体調が悪いのでこれで」

「あ、圭君っ」



 担任の声には応えず歩き続け、学校を出る。

 足は自然と家路いえじを離れ、昨日あの少女――リセルに出会った場所へと向いていた。



 何が起こったかはいまだに解らない。きっと解りようがない。でも。

 触れた唇の冷たさ。預けられた体の軽さ。……昨夜、俺がここであいつと出会い、何らかの「つながり」を得たのは間違いない。



 あの少女は、きっとまた俺の前に現れる。そういう予感があった。

 そして、俺はまたあいつに会いたいと思っている。

 聞きたいことは山程あった。でも、それだけが会いたい理由じゃない。

 自分の中でも上手く整理がついていなかったが――とにかく俺はあいつの存在を、なかったことには出来なくなってしまっていたのだ。



 ゲームセンターを従業員用の勝手口から抜け、店の裏からほど近い高架下こうかした、その付近にある袋小路へと足を運ぶ。

 不良たちのまり場になって久しい薄暗うすぐらい行き止まりに人の姿はなく、知らず落胆らくたんと安堵の入り混じった息を口からこぼしていた。

 高架上を電車が通る。壁からがれたらしい瓦礫がれきと行き場を失ったゴミだらけの壁から視線を外し、いまがたやってきた方向に目を向けると――一体いつから付いてきていたのか、さっき意識の外に追い出したばかりの担任がおずおずとやってきていた。



「――先生?」

「あ、いやあの、ごめん。別に付けてくつもりはなかったんだけど。今日、どのみち家庭訪問しようと思ってたし…………ところで、圭君。こんな人気のない行き止まりの場所で、何をするつもりだったの?」



 ……体調が悪いと言ったでしょう、などと返そうとも思ったが。

場所が場所だ、何を言っても嘘くさい。俺は観念し、当たり障りのない話題を暴露しようと口を開いた。



「……昨日、ここであの交番に置いていった一年生が倒れてたんですよ。雨でよく周りを見てなかったから、あの一年生の私物があったら届けてあげないとなと思っただけです」

「じゃあ、やっぱり走ってったのは圭君だったの? もう、それならそうと嘘つかないで教えてよ」

「言えば面倒になるでしょう? それに、誰が一年生をやったかも解らないのに、万が一女の人の先生に危害が及んだら嫌だなって。そう思っただけです」

「お、女の人って……あのね圭君。ずっと言おうと思ってたんだけど、先生は仮にも、あなたの先生なんだよ? もっと頼ったっていいんだってば。……というか今、露骨に私の機嫌きげん取って話を終わらせようとしたでしょう。気持ちは嬉しいけど」

「気を悪くしたならすみません。他意たいはないので、気に――」



 ――そう、担任に返そうとした時だった。



『アマセケイってのはテメェか? そこのキンパツ』

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