「一秒たりとも」
「いつの間に、と言われる程、お前に何かを披露したこともないと思うんだがな。そんなに俺に注目していたのか?」
「バカか? 風紀委員会内のお前のデータに、土属性の魔法なんて記録されてなかったって言ってんだ」
「記録者に伝えろ。俺を正確に記録したいなら、それこそ部屋に記録石を仕掛けるくらい、一分一秒も目を離すなとな。俺は一瞬前の俺にも負けんぞ」
嘯き、奴の意識を逸らす。
雷の鎧は、凍の舞踏を受け止めたときより明らかに劣化している。鎧から千切れ、後から後から千々に消えていく紫の鎧。あれでは、そうそう長くはもたないだろう。
堅き守人。
石の蠍。
土属性は雷属性に強い、と解ってはいたが……相性がはっきり出過ぎるのも考えものだな。
勿論、あいつも雷属性以外の魔法を使うことは出来るだろう。
だがマリスタ戦であれだけ派手な戦いをした後だ。消費魔力をトチれば気絶の可能性もある。
俺が更なる優勢属性での反撃をしてくることも容易に予想出来る中で、使い慣れていない魔法を撃ってくる可能性は低い。
畳み掛けるか。
「〝砂弾の砲手〟!」
「!!」
俺の背後で、乾いた砂が次々と砲弾の形を成して滞空し、ゆっくりと回転し始めた。
雷音。
視界に見えた先行放電目掛け、砂の砲弾を掃射する。
上に、下に、横に。
砂塵の間を縫うようにして接近してくる紫の雷光が、俺の視界にもはっきり映った。回避の為に速度を落としたのか。
「ぬォらッ――――」
紫電がスペースの障壁を足場に、槍の一棘のように飛び込んでくる。
堅き守人は当然間に合わず、止む無く障壁で防御。雷を帯びた膝蹴りを防がれたロハザーが弾かれるようにして跳び退り着地、またも雷電を伴って光と消える。
「チ……」
マリスタが見破った通り、奴は雷属性の所有属性を持つが雷そのものではない。
あくまで、ロハザー・ハイエイトという人間が雷の真似事をしているだけだ。
故に奴の速度は、雷速に迫ろうとしているが雷速ではない。
とはいえ、それでも常人には僅かに視認出来る程度。
それに即応出来るのが魔法障壁だけとあっては、ふとした拍子に決着の一撃を叩き込まれかねない。
何か策を打たなければならないが――――




