「勝機を探して」
紫電が奔った。
そう認識できる程度には、まだ余裕がある。
「〝主よ。雷鳴従えし寵愛の光、天衣担う織り手よ〟」
「!――――」
障壁に弾かれ消える電撃。
視界を覆う紫の膜が消える向こうで、ロハザー・ハイエイトは――既に雷の鎧を身に纏っていた。
「〝今斯の身命を器とし、先天の契約の下、我が御霊に神罰の一旦を担わせ給え〟――――雷光の憑代」
ロハザーに侍るように、彼の周囲を閃く紫電。
胴と脛の辺りを守るように帯電させたロハザーの飴色の瞳が俺を捉え、
消えた。
「英雄の鎧」
唱える。意気を魔力に乗せ地を蹴る。
足裏に圧縮された魔力の解放に乗って瞬転。振り返りながら着地。
――ロハザーは既に、先俺がいた場所から動き出そうとしていた。
再び瞬転ふg6t7う9い0――――――――ッッッ!!?
「ン゛、ぐォ……ッ!!、?」
落ちる。
肩を上から襲った一撃。威力からして蹴り。そして今の衝撃は恐らく――電撃。
瞬転で上空へ跳んだ筈だ、どうして……
……どうしても何も無い。
瞬転を見抜かれ、タイミングを合わされたのだろう。
立ち上がりながら追撃を精霊の壁で受け止める。
ロハザーは止まっていた。
やはり魔法障壁があると攻撃が出来ないのだ。
しかし、それにしても。
「思ったより速いんだな。それが雷光の憑代か」
「……そうだ。今日の相手はテメェで最後だからな――出し惜しみはしねぇ」
「それがいいだろう。お前には前の試合の消耗がある。長引くのは得策じゃないだろうからな」
「だったら、逃げ続ければテメェの勝機も多少はあるかもな」
「冗談だろ。俺とお前の実力差の中で何分逃げ回ればいい」
「…………その通りだッ!」
精霊の壁の消失寸前に動き出すロハザー。当然だな。
奴のスピードには追いつけない。瞬転ならもしやと思ったが、先のやり取りを考えるとどうも分が悪い。
まだ確かめるべきことは山程ある。
ロハザーが掻き消える。だが、
「正面――」
奴が移動してくる場所に先行放電が出ることは、マリスタとの戦いで解っている――――!
「凍の舞踏」
――凍気の波動が、奴を止めた。




