表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/1260

「蚊帳の外、戦いの中、みずから」



『時間は巻いてるが、このまま準決勝を始めるぞ。……準決勝第一試合。ケイ・アマセ対、ロハザー・ハイエイト。第二試合、ナイセスト・ティアルバー対、ヴィエルナ・キース』



 ……観覧席にいる人の数が、増えている気がする。

 いや。この二十四層そのものに人が増えているのか。

 観衆の注目を集めているのは、この第二ブロックで間違いない。

 分かり切ってはいたことだが、なんだかな。自分一人だけ、蚊帳かやの外にいるような気分だ。

 それも当然。この盛り上がりも、貴族と「平民」の対立も。どちらも俺にとっては、全くもっあずかり知らぬ他人事ひとごとでしかないからだ。



〝ケイ。お願い(・・・)



「…………」



 誰かの都合も彼女(・・)の願いも、知ったことではない。

 俺はただ俺のためにのみ戦い、血を流す。

 その為だけに、俺はこの異世界へと来たのだから。



「ケイ」



 声。

 友人に体を支えられたマリスタが、救護スペースから出てきていた。

 何人かいなくなっているが――恐らく、ナイセストの魔波まはを受けた影響ではないだろうか。



『さっそく第一試合を始める。ケイ・アマセ、そしてロハザー・ハイエイト。スペースに入って位置に付け』



 トルトの声。

 真っ先に張り詰めた顔になるマリスタ。

 どうしてお前がそう険しい顔になるんだよ。



「……氷属性こおりぞくせいって、水属性みずぞくせいもとにして出来てるんだよね。ってことは、もしかして」

「やはり勉強が足らないな。氷は液体えきたいの水と違って、電気を通しにくい半導体はんどうたいだ。相性あいしょう優劣関係ゆうれつかんけいは生じない」

「……雷は、当たったときの衝撃がものすごいよ。感じたことない痛みが体中をかきまわすから。だから、一発でも当たったら――」

英雄の鎧(ヘロス・ラスタング)魔力回路(ゼーレ)に十分な魔力を通していれば、体のしびれや痛みにある程度鈍感(どんかん)になれる。それはお前と奴との試合内容から大体わかった。それをおこたらずに立ち回るだけだ」

「……えっと。あと、」



 マリスタが下を向き、必死に言葉を探している。

 俺を引き留める、棄権きけんさせる為の言葉を探している。決して俺を応援しに来た訳じゃない。

 それが解っているからこそ、マリスタを支えているエリダも、周りにいるシスティーナやシータも黙っているのだろう。全員気持ちは同じなようだ。



 怖い気持ちは理解出来過ぎている。

 本来なら付き合い必要のないこんな問答に応じてしまう辺り、俺の中にもロハザーとの一戦を避けたいという気持ちがあるのだろう。



「もう呼ばれてるんだ。マリスタ」



 断ち切って行かなければ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ