「瞬間回顧、少女たち」
「リア」
パールゥの声に、リアは座ったまま目線を下げ、目を細めた。
「世界が急に遠のいて、思考がやけに鈍くなる感じ。それが死に向かう感覚なんだって気付くのは、大抵ずっと後なの」
「あー……あたしも思い出したな」
リアの言葉をエリダが継ぐ。
「意識できても、何故かその時はほとんど怖くないのよね、あれって。死を怖がる余裕がないっていうか」
「……私も知ってる。あれ、すごくヤだ。さいあくだよね」
「み、みんなそんな体験したことあるの……?」
パールゥが戸惑いを隠せず、そう漏らす。
「時代が時代だしね」、とシスティーナが応えた。
「まだ、あの戦争から――『無限の内乱』から二十年だもの。私達は生まれてなかったけど、一親等が戦禍に見舞われた人だって多いのよ」
「……そういう意味じゃ、私のところも酷かったわ。死の恐怖って程じゃなかったけど」
枯れた目でシータ。パフィラが彼女にしがみ付いた。
「あれはつらかったでしょー! かみつき足りないもんわたし!!」
「んがっ?! あ、あなたねぇ、しがみつくにしてももう少し加減して……」
「散々噛みついてたでしょうがあんたは……ま、あたしも殴り足りないけど!!」
「私の気は済んだ、かな」
「甘いわよリア!! あのクソ共の鬼畜の所業、片時も忘れたことないからねあたしは!!」
「あまあまちょこれいとー!!!」
「あれ以上やったら退学だったよ。きっと」
「こわいもんかー!!」
「う。あたしちょっとコワいかも」
「うらぎりものー!! がぶりちー!!!」
「だーっ?! かみつくんじゃないわよ頭にぃッ!!」
「あはは……ありがとみんな。なんか元気出てきた」
涙の跡を頬に残しながら、マリスタが苦笑する。
パールゥはなんだか取り残された気持ちで、所在無げに眼鏡をかけ直した。
「ええ、元気が一番です。元気ついでにもう実技試験のことなど忘れて、これから皆でカフェにでも繰り出すというのは如何ですかっ☆」
「カフェでも試合の中継はしてると思うけど?」
「水を差しますねシスティーナこの場を一メートルでも離れられれば何でもいいということくらい現在のマリスタの状態から察することが出来ませんかねぇ貴女ほどの頭脳とバストとおシリをお持ちならばねぇ」
「ちょ。お尻の話題だけは勘弁して」
(お、お尻……??)
「ともかく! 気持ちを切り替えるためにも、私はこの場から脱することを提案いたしますが? いえもはや提案でなく決定です、いざ実行に移しましょう」
「ケイのやつは、感じないのかな」
危惧していた名前がマリスタの口を突き、一人盛り上がっていたナタリーがガックリと肩を落とす。
さもありなん、とシスティーナが彼女の言葉を拾った。




