「優しくなんてしない」
「――――……」
マリスタから、覇気がみるみる失せていく。
騒ぎ立てていた少女たちが一様に押し黙り、あのナタリーでさえ、どう言葉をかけたらいいか分からない様子だ。
マリスタを見る。
同じタイミングで、マリスタも、俺を見た。
…………俺はお前じゃない。
そして、お前の友達でもない。
お前が欲する言葉が慰めか叱咤か、俺には判らない。
判る必要もない。
「千発をゆうに超える魔弾の砲手、正規の手段でない魔法の行使、本来劣勢であるはずの雷属性に水属性で拮抗してみせる、物理法則を無視し得るほどの魔力ブースト……見た目には互角でも、消費した魔力量はだいぶ――――いいえ、ハイエイト君の数倍だったと思うわ。文字通りの力押し。時間切れで審判判定になってたとしても、きっとハイエイト君が」
「それ今言う必要あります?」
殴り掛からんほどの殺気を伴い、ナタリーが切れ長に細めた目でリセルを流し見る。
リセルは腕を組んだまま口だけを小さく笑わせ、明後日の方向を向いて肩を竦めた。
初めて魔女に好感が持てた気がした。
「き……気を落とさないで、マリスタ。義勇兵コースに転属して一ヶ月で、ずっと義勇兵コースだった、しかもグレーローブのハイエイト君をあそこまで追い詰めたのよ? それだけでも大殊勲だわ」
「そ、そうだよ。しかも相性が悪い雷属性に対してだよ? あそこまで堂々と戦えたんだもの。みんなビックリしてたんだから」
「だいこーふん! だいけんとー!!!」
「ほんとなんだからね! まさかアンタがここまで魅せてくれるなんて、あたし思いもよらなかったんだから! もーあんたはホント、いつの間にか遠くに行ってくれちゃってさ」
「そうよ。私が褒めるくらいには、あなたはすごかったんだからね、マリスタ」
「自信もって」
「……、…………」
賞賛の言葉にも、マリスタはだんだんとうな垂れていき、小さく首を横に振る。
シーツを握る手に力が籠もり、なのに固まった体はまるで壊れたメトロノームのように、揺さぶられるままにフラフラと動いている。
〝たすけておねえちゃん、たすけてぇ……〟
……お前が何を思っているかは想像がつく。
だが、ダメだ。
俺はそれをごまかす言葉を、一つだってお前にくれてやることはない。
「…………わざとらしく呆然とするな。そんなことをして何になる」
「……――」
「ちょっと黙っていていただけませんかケイさんッ!!」




