表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
278/1260

「優しくなんてしない」



「――――……」



 マリスタから、覇気がみるみる失せていく。

 騒ぎ立てていた少女たちが一様に押し黙り、あのナタリーでさえ、どう言葉をかけたらいいか分からない様子だ。



 マリスタを見る。

 同じタイミングで、マリスタも、俺を見た。



 …………俺はお前じゃない。

 そして、お前の友達でもない。

 お前が欲する言葉がなぐさめか叱咤しったか、俺にはわからない。

 判る必要もない。



「千発をゆうに超える魔弾の砲手(バレット)正規せいきの手段でない魔法の行使、本来劣勢(れっせい)であるはずの雷属性に水属性で拮抗きっこうしてみせる、物理法則を無視しるほどの魔力ブースト……見た目には互角でも、消費した魔力量はだいぶ――――いいえ、ハイエイト君の数倍だったと思うわ。文字通りの力押し。時間切れで審判判定しんぱんはんていになってたとしても、きっとハイエイト君が」

「それ今言う必要あります?」



 殴り掛からんほどの殺気を伴い、ナタリーが切れ長に細めた目でリセルを流し見る。

 リセルは腕を組んだまま口だけを小さく笑わせ、明後日あさっての方向を向いて肩をすくめた。

 初めて魔女に好感が持てた気がした。



「き……気を落とさないで、マリスタ。義勇兵コースに転属てんぞくして一ヶ月で、ずっと義勇兵コースだった、しかもグレーローブのハイエイト君をあそこまで追い詰めたのよ? それだけでも大殊勲だいしゅくんだわ」

「そ、そうだよ。しかも相性が悪い雷属性に対してだよ? あそこまで堂々と戦えたんだもの。みんなビックリしてたんだから」

「だいこーふん! だいけんとー!!!」

「ほんとなんだからね! まさかアンタがここまで魅せてくれるなんて、あたし思いもよらなかったんだから! もーあんたはホント、いつの間にか遠くに行ってくれちゃってさ」

「そうよ。私が褒めるくらいには、あなたはすごかったんだからね、マリスタ」

「自信もって」

「……、…………」



 賞賛の言葉にも、マリスタはだんだんとうなれていき、小さく首を横に振る。

 シーツを握る手に力がもり、なのに固まった体はまるで壊れたメトロノームのように、揺さぶられるままにフラフラと動いている。



〝たすけておねえちゃん、たすけてぇ……〟



 ……お前が何を思っているかは想像がつく。

 だが、ダメだ。              (私とそっくりね)

 俺はそれをごまかす言葉を、一つだってお前にくれてやることはない。

                     (あなたはお)     (母さんと同じ)



                     (いいえ。お母さんより)      (も大きい、大きい優し)       (さを持っている)



「…………わざとらしく呆然ぼうぜんとするな。そんなことをして何になる」

「……――」

「ちょっと黙っていていただけませんかケイさんッ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ