表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/1260

「やはり風呂はない」

「はい。ここがアマセ君の部屋よ。その魔石ませきに手を当ててみて」



 シャノリアに従い、直方体にかたどられた魔石に手を当てる。

 紫とピンクの混ざった色をした魔石があわく光ったかと思うと、カチリと音がして、寮室りょうしつのドアが開いた。生体認識せいたいにんしきとは大層な技術だ……そのくせ一方では、王様が統治する王政国家おうせいこっかだったり、日常的に傭兵ようへいが必要なほど世界がすさんでいたり……この世界の発展具合がいまいちわからない。



 鋼板こうばんでできた内開きのドアを開ける。中は想像とそう遠くない一般的な寮室、といった風情ふぜい。十歩も歩けば奥に突き当たる小部屋。簡素な勉強スペースに洗顔・シャワースペース――やはりというか、風呂はない――、トイレ――一応水が見えるから水洗のようだが、見たことがない形だ。これは慣れるまで時間がかかるかもしれない。地味に由々(ゆゆ)しき問題だ――、そしてベッドが…………二つ?



「おい、シャノリア。あのベッドは――」

「ああ。ここ、相部屋なのよ。個室が使える人は極僅ごくわずかでね」

「誰かと一緒なのか?」

「ふふ。聞いて驚きなさい、ケイ。なんとここ、相部屋だけど――当分の間、ケイ以外誰も使う予定がないのよ!」



 なぜか誇らしげにマリスタ。こいつ、知ってることを教えるときはやたらイキイキとするな。癖なのか。



「つまり……相方のいない相部屋ってことか?」

「正しくは、『相方が休学中の相部屋』ね。ここ、プレジアの生徒会長クンが一人で使ってた相部屋なのよ」

「生徒会長……が、いるのか。ということは、生徒会が……?」

「あるよ。生徒会と、風紀委員会。意外と権力強いから、活動も活発らしいよ。どっちもよく知らないけど」



 特に気にする様子もなくマリスタ。だが、関係者でもない限り縁遠いのが生徒会というものだろう。

 ……しかし、その生徒会の長が休学中とは。



「別に詮索せんさくするわけじゃないが。何か病気なのか? その生徒会長は」

「ああ、病気とかじゃないの。彼の場合は……『公務こうむ』、って言った方がいいのかしら。お家柄、あちらも色々大変そうだし」

「……お家柄?」

「会長のギリート君は貴族きぞくで、家の仕事も大変みたいなんだ。家族も王国に仕えてて、手が離せないらしくって」



 ……キゾク。

 それはやはり、高貴な一族、という文字を当てる貴族なんだろうな。

 こんな世界だ、貴族がいたって何も不思議じゃない。



「ああ……アマセ君。貴族について教えるとね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ