「優等の困惑」
精霊の壁が砕け、持っていた所有属性武器も間に合わず、
「djふぃあぐッッ!!!」
紫電を帯びた拳が、マリスタに深々と突き刺さった。
「か――ァ、」
目を剥くマリスタ。拳の力によって彼女は遠くに、
「まだだぞ」
「!?」
吹き飛ばない。
突き込んだ拳で瞬時にマリスタの胸倉を掴み上げたロハザーが不敵に笑う。拳に再び紫がちらつき、
「drつふゃふをいえおふgy7y9ぁああああああ!!!!!」
ロハザーの体内で雷電へと変換された魔力が零距離で注ぎ込まれる。
マリスタの震えを直に感じながら、ロハザーが勝鬨を叫ぶ。
「どうだ――どうだコラァッ!!」
「jひy……f6ぎぇ……!!!」
「!?」
マリスタを掴み上げる腕に圧を感じ、ロハザーが視線を下げる。
「――――、」
腕を締め付けるのはマリスタの手。
「テメェ……は……!!」
――この期に及んで、まだ。
ロハザーが手を離し、突如解放されてふらつくマリスタの脇腹へ回し蹴りを叩きこむ。
小さな呻き声と共に吹き飛んだマリスタは地面を転がり、スペースの壁に激突。うつ伏せで倒れ、動かなくなった。
「はァ……っ!」
――大きく息を吐いた自分に、ロハザーは驚愕する。
(バカな。グレーローブの俺が、こんなザコに息を乱したってのか……!)
「…………ふざけろ。マジで、テメェ」
ロハザーの目からは、マリスタの表情は窺えない。
しかし彼女は、震える手で地面をひっかくようにして再び起き上がろうとしている。
(どうしてだ)
「なんであんたは……俺は……!」
(あんたと――テメェごときとフツーに戦ってんだ?)
マリスタが壁で体を支え、顔は俯かせたまま、震える足で立ち上がっていく。
(圧勝だろ、フツー。――今何分だ。何分経った?)
青い瞳が、ロハザーを捉え。
少年は、自分が後退ったような錯覚を覚えた。
(こんなワケねぇ。だってよ、これじゃあまるで――いい勝負でもしてるみてぇじゃねぇか――!)
「…………がむしゃらに頑張っただけじゃねーか、あんたは」
「ハァ……ハァ…………は?」
「冗談じゃねぇ。頑張るだけなら誰だって出来るんだよ。ロクに考えもしねーで戦う理由も曖昧なままでドリョクシタドリョクシタって、テメェはそれを認めて欲しいだけじゃねぇか。承認欲求満たしてェだけならヨソでやれよ。ガキかよウザってェ!」
「チッ…………うっせーわね、あんた……ハァ……!」
(――ああ、くそっ。止まんなさいよ、足の震えっ)




