「不自然なタタカイ」
(……等と持ち上げはしたものの。実際の所、ただの障壁で防げてしまう魔法なら、障壁の持続時間に気を付けながら戦えば、そう脅威になる訳でもない。相手がマリスタだからこそ、それ一つで翻弄出来ている、というだけの話だ。それに、)
〝風紀委員会の。中でも、ちょっと、強いから。だからよく、セットに。されるの。私と、ロハザーと、ナイセスト〟
(そう。それだけ一緒にいて、あの魔法を全く見たことがないというのは、少し妙だ。……例えば、あの「毒」の魔法をヴィエルナが使われていたとしたら。障壁を展開することが出来ないヴィエルナはあの雷速の毒を防げず、殆ど何も出来ないかもしれない。――あの技、ロハザーの対ヴィエルナ戦を想定した隠し玉だったんじゃないか?)
圭の視線が次に捉えたのは、試合開始から一歩も動かず、ただ魔法に翻弄されるマリスタを睨み続けるロハザー。
(その隠し玉を、どうしてこのタイミングで使ったのか…………もしかするとあいつ、落ち着いて見えるのは見かけだけかもしれない。……さて、マリスタ。お前はどうする?)
◆ ◆
ああダメダメダメダメっ、何も思い付かない!
「ぅわくっ!?」
出した障壁に、雷が思い切りぶつかる。もうすっかり慣れてしまった、視界が閃光に包まれる一瞬。なのにその衝撃が伝えてくる魔物の叫びのような音と恐怖にはちっとも慣れず、届かないと分かっているのに顔を覆って目をつぶってしまう。
一度体験した雷の恐怖が、頭から離れない!
「っ、近付いてもダメ、でも離れてもダメ……」
障壁出して、雷を防いで突撃しても、パンチも魔弾の砲手も障壁で防がれる。
そうこうしている内に私の障壁の方が切れて、あの体が動かなくなるやつをやられる。そうなれば、今度こそあの雷に……
「ダメよマリスタ、ダメ……気持ちが折れたら、本当に勝てなくなる!」
「心配しなくても勝てねぇよ。あんたは」
「っ……うっさいな!」
お腹の底から湧き上がるムカムカをなんとか押し止めて、感情任せに突っ込みそうになる足を止める。
そりゃ今すぐにも突っ込んでド派手に吹き飛ばしてやりたいけど……これはトーナメント。次の人と闘う余力も残しておかないといけない。あいつだって温存しながら戦ってるらしいし。あそこから一歩も動かないなんて……
……待って。なんで動かないんだろ、あいつ。




