「絶対のイカズチ」
地を蹴る。と同時に無詠唱でもう一度精霊の壁。
これが大正解で、直後に障壁に紫が当たって弾け、砕け散った。
防いだわよ、あんたの所有属性――!
「ッえええいっ!」
棒を突き出す。と同時に、私の意思を認知した所有属性武器がまっすぐにハイエイト君目がけて伸び、あのいけ好かない顔面を一発――――
棒をつかまれた。
でも関係ない。私の所有属性武器は伸縮自在な――
紫。
棒が爆発した。
「えっ!?」
手元から弾かれるようにして、水の棒がただの水に――いえ、完全に消える。
雷に包まれた水が弾け飛んで、魔素のチリになって空気に溶けていってしまう。
どうして――ケイに凍らされた時は、壊れても消えたりなんてしなかったのに!
「くっ――!!」
体はもう目の前のハイエイト君に突進してる。
棒を持っていたのとは反対の手をかざして、水の弾丸、流弾の砲手を背に準備する。ハイエイト君が少しだけ目を開き、同じように弾丸を自分の後ろに作った。雷をまとった弾丸――雷弾の砲手。
「いけぇっ!」
「――――」
青と紫の光が飛ぶ。爆発で視界が多少くもるはず、そこでまた所有属性武器を――
紫が青を突き破――――った。
「えええ――――!!?」
太い声が出てしまう。
ヤバい、直撃だ。
いえ大丈夫、まだ精霊の壁は残って――
「くっ――――――――あああ1q2w3rああぁ!!?!??!」
筋肉だけをぶるぶると振動させられる感覚。
体の全部が開き切ってしまうような全力感。
痛みとか熱さに似た、衝撃。
そのぜんぶが、一瞬で体中を駆け巡って――――ぬけた。
どしゃり、と体が背から落ちる。横向きに、転がる。
――――障壁が……破れ、たの?
「当たり前だろ。精霊の壁や兵装の盾は、時間経過でどんどん効力が弱まってくんだぜ。効果時間はもって十数秒、しかも今は障壁だけに集中できない戦いの場だ。んな時に、障壁頼みの特攻なんざ以ての外なんだよ、お嬢サマ!」
「あ、ぅっ……!」
――立たなきゃ。
私まだ、あいつに近付けてすらいない。
せめて立たなきゃ。あいつの前に、立た――
紫。
力を入れた両腕が、またガクンと崩れ落ちる。
……また、だ。
何なのよ。一体――
「――何なのよ、それっ……!!!」
「分かんねえだろ? 知らねぇだろ? 手も足も出ねぇだろ? そうやって地ベタ這いつくばって、喚くことしか出来ねぇだろ?」
「っ~~!!!!」
「知識も足りねぇ、経験も足りねぇ。とっさの機転も分析も利きやしねぇ。特に知識に関しては絶望的だ――――だから雷属性に、水属性で真正面から挑むなんて馬鹿な真似が出来んだよ!」
「――――ぁ、」
「今更気付くなボケ。押し負けて当然だ――――あんたの水と俺の雷は、完全な優劣関係にある!……この意味が解るか?」
「……………………………………」
のどが、息を飲んだ。
「あんたの魔法は、一切俺に通用しねぇ。あんたは俺に、百パーセント勝てやしねぇんだよ!」




