「雷の男の子」
ハイエイト君が笑う。
それと、同時だった。
「ッ!?」
紫の光。
それが一瞬、私の視界に伸びたかと思うと――私はまた、足の力を失って倒れた。尻もちをついたニブい痛みがお尻に広がる。
魔法だ。魔法で何かしている。
「っ、だったら精霊の――――ッ!!?」
立ち上がろうと力を入れた腕がまた崩れて、無様に転がってしまう。
慌てて手を動かしてみたけど、ちゃんと動く。やっぱりハイエイト君は動いていない。そして私の精霊の壁は――魔法障壁は、ちゃんと発動して私を包んでいる。
だっていうのに。
「どうして精霊の壁で防げないの――!?」
「アンタもしかして、下調べもしてねーのかよ。俺の所有属性について」
「……あんたの所有属性?」
「ハァ……マジでなんで受験したんだ? あんた。チッ、仕方ねぇ。隠しても意味ねえから教えといてやるよ」
「!――――、」
パリ、という音。また紫の閃光。思わず体を固くしちゃったんだけど――でも、今度は体から力は抜けなかった。紫は私の目の前で障壁に当たり、消える。
今度は、障壁に当たった……いや、それよりも。
私はやっと、ハイエイト君の言おうとしていることが分かった。
すぐに消える紫の光。
弾くような高い音。
ハイエイト君の所有属性。
〝おいおい、一体どこの「平民」だよ。こんな騒ぎを学校で起こしやがってんのは〟
きっと私は、その正体を知っていて。
きっと私は、その所有属性を見たことがあった。
「雷――――!」
「そうだよ。俺の所有属性は雷。基本五属性の中じゃ、最強と謳われる属性だ!」
風。
ハイエイト君の周囲に、小さな稲妻がいくつも奔った。
突然、視界が紫色に染まった。
「ッ!!?」
思わず目をつぶり、腰をかがめて後ずさってしまう。
目を開けた先には、明らかに私を馬鹿にしているハイエイト君の顔。
「っ、このっ!」
「ハハハッ。届くわけねえだろ、バァーカが! 自分で展開した障壁、忘れたのかよ!」
「~~~~ッ!!!」
ああ、ああ、ああ。ムカつくムカつく。
そうだ、私には精霊の壁がある。いくら五属性最強とかなんとか言ったって、障壁で防げるのには違いないんだ。
だったら、私にとってはなんの影響もない。
敵の攻撃を防ぐ。こっちの攻撃を当てる。
ただそれだけに、集中してけばいいだけ――!
手を横にかざす。私の魔力が手の中に水の塊を創り出して、ぼこぼこと棒の形を――所有属性武器を完成させる。
英雄の鎧。
「いっっ――くわよ!!」




