表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/1260

「見惚れる結晶」



 ――――目に、刃が突き刺さった。



『!!!?』



 目の中に感じた、金属らしき冷たい衝撃はやがて消え。

 次いで、硝子がらす玉を持った右手から――張り詰めるような痛みを感じた。

 それがあまりにも痛くて……俺は、固く閉じていた目を、ゆっくりと開けた。



「…………氷…………」



 俺の右手は、硝子玉を巻き込んで凍結していた。



 花火のように、手から弾け飛ぶようにしてあらわれたらしい氷柱つららが、硝子玉から十数センチ伸びて止まっている。氷柱が発する冷気が極小の結晶を帯び、綺羅星きらぼしのようにその周囲を小さく舞う。――どうやら、俺が目に感じた「やいば」は、冷気の小さな欠片なようだった。



 しかし……氷の造形ぞうけいを初めて見た気分とは、こういうものなんだろうな。



「あ――アマセ君ッ!?」



 ――マリスタの声に呼応して、痛覚が一斉に自己主張を始める。

 痛みを感じる以上、完全に凍結しているわけではないんだろうが……っ。



「シャノリア。どうしたらいい、これは」

「っ、待ってね。ザードチップ先生、氷をお願いします」

「はいよ。ちっと手荒にいくぞ、坊主」

「ッ!?」



 言うと同時に、トルトは手で振り払うようにして――俺の手から伸びていた氷柱を残らず破壊した。残った氷柱もくだき落とし、あっという間に残りは俺の手をおおった氷だけとなる。



「これ砕くと手も砕けかねんですかねぇ」

「痛みは、感じるぞ」

「凍結の深度が分からない以上、下手に砕くのは危険だと思います――準備出来ました。アマセ君、手をこっちへ」



 シャノリアが用意したのは、いつかも見た拳大ほどの水の玉。そこに手を入れると、やがて氷の拘束が弱まり――――程なくして、俺は氷の手枷てかせから脱した。温かく感じる水が手を包み込む。



「どう? 手の感覚は戻ってきてる?」

「ああ……もう大丈夫そうだ、ありがとう。シャノリア、つまり俺の所有属性エトスは」

「ぶったまげるぜ、全く。『氷属性』……氷の所有属性エトスなんざ、滅多に聞かねぇぞ――つか、あーあ……魔法玉も一緒に壊しちまった……」

「てことはアマセ君、氷と……水と風も所有属性エトスとして持ってるってこと!? うわなにそれスゴ! ズルい!」

「……すごいことなのか。やはり」

「すごいというか……いい? アマセ君。所有属性エトスはその人間が生来備えている性質(・・・・・・・・・)を、魔力回路(ゼーレ)を通してあらわれる十属性に当てはめて捉えたものなの。その『人間が生来備えている性質』のことを、創生淵源パトスっていうんだけど」

「パトス?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ