「見惚れる結晶」
――――目に、刃が突き刺さった。
『!!!?』
目の中に感じた、金属らしき冷たい衝撃はやがて消え。
次いで、硝子玉を持った右手から――張り詰めるような痛みを感じた。
それがあまりにも痛くて……俺は、固く閉じていた目を、ゆっくりと開けた。
「…………氷…………」
俺の右手は、硝子玉を巻き込んで凍結していた。
花火のように、手から弾け飛ぶようにして顕れたらしい氷柱が、硝子玉から十数センチ伸びて止まっている。氷柱が発する冷気が極小の結晶を帯び、綺羅星のようにその周囲を小さく舞う。――どうやら、俺が目に感じた「刃」は、冷気の小さな欠片なようだった。
しかし……氷の造形を初めて見た気分とは、こういうものなんだろうな。
「あ――アマセ君ッ!?」
――マリスタの声に呼応して、痛覚が一斉に自己主張を始める。
痛みを感じる以上、完全に凍結しているわけではないんだろうが……っ。
「シャノリア。どうしたらいい、これは」
「っ、待ってね。ザードチップ先生、氷をお願いします」
「はいよ。ちっと手荒にいくぞ、坊主」
「ッ!?」
言うと同時に、トルトは手で振り払うようにして――俺の手から伸びていた氷柱を残らず破壊した。残った氷柱も砕き落とし、あっという間に残りは俺の手を覆った氷だけとなる。
「これ砕くと手も砕けかねんですかねぇ」
「痛みは、感じるぞ」
「凍結の深度が分からない以上、下手に砕くのは危険だと思います――準備出来ました。アマセ君、手をこっちへ」
シャノリアが用意したのは、いつかも見た拳大ほどの水の玉。そこに手を入れると、やがて氷の拘束が弱まり――――程なくして、俺は氷の手枷から脱した。温かく感じる水が手を包み込む。
「どう? 手の感覚は戻ってきてる?」
「ああ……もう大丈夫そうだ、ありがとう。シャノリア、つまり俺の所有属性は」
「ぶったまげるぜ、全く。『氷属性』……氷の所有属性なんざ、滅多に聞かねぇぞ――つか、あーあ……魔法玉も一緒に壊しちまった……」
「てことはアマセ君、氷と……水と風も所有属性として持ってるってこと!? うわなにそれスゴ! ズルい!」
「……すごいことなのか。やはり」
「すごいというか……いい? アマセ君。所有属性はその人間が生来備えている性質を、魔力回路を通して顕れる十属性に当てはめて捉えたものなの。その『人間が生来備えている性質』のことを、創生淵源っていうんだけど」
「パトス?」
 




