「Interlude―78」
「いつの間にか……真似、されてるし。くやしい」
「学ぶ力も真似ぶ力もあるというわけですね。つくづく不快な男です」
「あ。ナタリー! ここで見てたの?」
「誰が余暇使ってまであんな癇に障る男の試合を近くで見たいですか。報道委員の仕事ですよあくまで」
「……いい絵、撮れた? コーミレイ、さん」
「私と奴の関係性を知っていてその台詞だとしたら相当性格が捻くれていらっしゃいますね風紀委員会のキースさんっ☆」
「? ごめん」
「……反面、そういう純粋な性格のせいで、記事にしてもそんなに話題にならないんですよね、貴女は」
「すごかったでしょ、ケイのやつ! あの瞬転もすごかったし!」
「興奮で語彙が死んでますよマリスタ。そして私にそれを聞かれたところで、何とも答えようがありませんね。体得しているキースさんに聞いたほうがいいかと」
「あ、そっか。ヴィエルナちゃんも使えるんだっけ、瞬転」
「うん……でも、あそこまで瞬転、上手く使える、人。そうそう、いないと思う……『飛び』も『降り』も、すごく綺麗、だった。並の練習じゃ、あそこまで、静かに出来ないから」
「認めたくありませんが、それは同意ですね。確かに今迄見てきたどんな瞬転より静かで、記録石からは予備動作が全く掴めませんでした。そりゃ足の裏の皮ベロベロになる訳ですよね」
「玄人に、なると、筋肉の動きのクセ、だけで。技の使用、見切られたり。するから、ね。極めるの、大事。私も、ずっと練習中」
(ふたりがなにをはなしてるのかわからない)
「貴女の瞬転も大概極められてると思いますけどね。瞬転に関して言えば、プレジアナンバーワンは間違いなく貴女ですよ。きっと貴女の足の裏の皮はゴリゴリに硬いでしょうね」
「え……そうなの?」
「おとめの、ひみつ」
「そしてひとつ、未確認の情報があったので確かめたいんですが。キースさんあなた、実は今回の試験にひっそりホワイトローブへの昇格懸かってるでしょう」
「ぎく」
「え!!? そなのヴィエルナちゃん!?」
「ど……どうでも、いいから。私のことは」
「どうでもよくないじゃん! うわーすごいな、ホント雲の上の人だわ。頑張ってね! うわ、ティアルバー君と同じになるんだ! うわすご!」
「き。きんちょうしちゃう」
「あぁゴメンっ! 平常心!」
「すぅ。はぁー。平常心」
「貴女方いつの間にそう仲良くなったんですか……? それにしても、相手の筋肉ダルマには失望の一言ですよ。あれだけキレ散らかしていれば、相手が見えなくなるのは道理だというのに。そんなことも解らない癖にベージュローブ、それも風紀で十本の指とは。底が知れるというものです」
「バディルオン君、カッカしやすいところ、あるから。あれがなければ、もっと強い、と思うんだけど」
「あれに伸びしろがあるようには思えませんけどねぇ。まぁ今回に限っては負け犬にも勝ち犬にも興味はないです――――用事を済ませましょうかね。マリスタ」
「え、私?」




