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「Interlude―75」



「て――?」



 予想だにしなかった名前に面食らい、ポカンとするマリスタ。



「あ……あ、ああ! テインツ君の友達ね! 急速に思い出したわ」

「よかった。……やっぱり、まだ。来てないの? オーダーガード、君」

「あ……そうだね、ちょっとやっぱ、その。――――うん。全然来てない」

「……ケイ、大けが。した日から、ずっと?」

「……うん。ティアルバー君に止められて、風紀委員に連れていかれてから、ずっと」



 当時の教室は、しばらくその話で持ちきりだった。

 ベージュローブ、貴族至上主義を掲げるオーダーガードの一人息子が、大貴族によって制裁された――噂はあっという間に学校を駆け巡り、そして風紀委員による指導(・・)を受けたテインツは、以降全く学校に姿を見せなくなってしまったのである。

 とはいえ、プレジア魔法魔術学校ではこの騒動をキッカケに学校に来なくなってしまう生徒が続出していくことになった。そのため彼一人に注目する者もいなくなり、今となっては、表向きにはほとんど気に留める者もいなかったのだ。



「ウワサじゃ、もう学校も辞めちゃうとか。もう辞めちゃってる、とか」

「……そう。……ごめんね」

「えっ」

「変なこと、きいて」

「う、ううん! 全然そんなことないよっ!……――」



 ぶんぶんと手を振ったマリスタの脳裏に、年少クラスの少年の涙が(よぎ)る。



「マリスタ?」

「……全然、変なことじゃないよ。うん、全然変じゃない。……おかしいよね、そういうの。やっぱり」

「……うん」

「私も。だから、もしもよ? もし私の力で、そんな空気をほんの少しでも変える手伝いが出来るんなら……私に変えられるなら、やってみたいって思うの」



 ヴィエルナの目をまっすぐ見つめ、マリスタが言う。――そんな言葉を聞いたヴィエルナはうんともすんとも言わずに、ただ無表情でマリスタを見つめ返した。



「……あれ。え、えーと。あの、ヴィエルナ……ちゃん?」

「…………」



 無言。

 恐らくは十数秒足らずの無言の間だが、会話の最中(さなか)のそれは重圧。

 ついにマリスタが発言を取り消したほうがいいのかしら、どうゴマカしたら爆笑かしら、などと逡巡(しゅんじゅん)し始めたとき――ヴィエルナはようやく反応を示して視線を落とし、小さく笑った。



「……いいね、それ」

「あ、ありがと……ちょっと長い、かなぁ反応までが」

「ごめん。びっくり、しちゃったみたい」

「び、びっくり??」

「うん。……ねえ。私も、それ。一緒に、やっても。いい?」

「え……い、いやそんな! アハハ、やってもいいかなんて聞かれるほどのことじゃ、」

「マリスタと、一緒。なら、私も、出来ると。思うから」

「わ……私と?」

「うん。今まで、どうしても。勇気……でなくって。でもね。マリスタ、いてくれるって、思ったら……なんか。――力、湧いてきた気が、して」

「……ヴィエルナちゃん」

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