「熾きろ。」
「覚えてたの? そう、基本五属性には相関関係があるわ。火は水に弱い、水は雷に弱い、雷は土、土は風、そして風は火ね」
「応用五属性にはないのか?」
「おうよ。応用五属性は、そもそも基本五属性の組み合わせで作んのさ。氷は水と風、鉄は土と火、ってな具合にな。あとは説明メンドクセェ興味あんならテメェで勉強しろ」
「ま、まぁそんな風に……応用五属性は相関関係もなくて、色々と変則的なことも多いから難しいの――って、ここまで説明してきたけど、まだ今のうちは、そんなことは心配しなくてもいいわ。傭兵でもない限り、属性の相関関係なんてほとんど縁のない話だから――マリスタが黙ってるのを見れば、分かるでしょ?」
「……そうだな」
確かに、いかにも知らなさそうな顔をしている…………待てよ。ということは、こいつは。
「し、知ってますから!!! 基本五属性くらい!!」
「もしかして、マリスタの所有属性は……水なのか?」
「えっ……なんで分かったの!?」
「ご明察ね、アマセ君」
シャノリアが笑い、胸の下で腕を組んだ。
「マリスタは水属性を所有属性としているわ。だから同じ所有属性の魔術師が、家で特別授業をしてあげてたってわけね」
「あ、そっか。アマセ君、あれ見てたからわかったのか」
「ディノバーツ先生、もういいでしょ説明は。さ、これを握んな坊主」
投げ渡された球を受け取る。
「やり方は教わったんだろ? そいつに魔力を流せ、すぐわかる――つっても、魔力を流すってこと自体が初めてじゃ、込め方なんぞ一層分からんわな……こりゃいい。ディノバーツ先生、ちと頼んます。私ゃ小便に行ってくるんで」
「ちょ……今検査中ですよ先生」
大きい方の玉をシャノリアに渡し、小さい硝子玉を握る。
幾度も見た魔法の光を思い浮かべ、
「いいんですって。どうせ、魔力を出すまでに時間かかるでしょそいつ。感覚覚えてねぇんだし……人間だって、生まれてから歩き出すまでに半年以上かかるんですから」
空気と共にあるという魔素を意識し、
「そ、そんなのやってみないと分かりませんよっ。歩くのとは違いますし、」
〝――――『リセル』〟
――あの時を、思い出す。
「それに、そう焦んなくたっていいでしょ。小便くらい行かせてくださいよ。あ、もしかして先に行きたいんです? ディノバーツ先生。そりゃ気付かなくて申し訳ない」
雨の中、俺に近付き、あまりにも弱々しく口付けた少女。
そして見得た、光のトンネル。
「違いますから!! 二人体制でしっかり見ておかないと、もし不測の事態が起こったら――」
〝――ごめんなさい、圭。ごめんなさい――――〟
熾きろ。
「んな大袈裟な――」
俺の勘が正しければ――――俺の魔力回路は、既に目覚めている――!




