「Interlude―74」
グレーローブ、ロハザー・ハイエイトの名前を。
(一回戦で……ロハザー・ハイエイト!!)
恐れか高揚か、知らず拳を握り締めたマリスタは、周囲にロハザーの姿を捉える。ロハザーは一瞬マリスタと目を合わせたが、すぐに目を閉じ、視線を外した。マリスタは笑う。
(――相手にとって不足なし、ね!)
となると、マリスタが気になるのはケイの場所である。
一縷の希望と不安を乗せて目を動かしたマリスタは、そう苦労せずケイの名を発見する。
それもそのはず。ケイ・アマセの名は、マリスタの真横の組にあったのである。
(――勝ち上がったら、二回戦でケイと当たる――――!!)
「楽しみ?」
「うひ!?……ってもう! ヴィエルナちゃんまた脅かして!」
「ケイ、近いね」
「無視かい!……まいいけどさ。うん、確かに近いよ。あいつと私、お互いに一回勝ったらあたる――あれ、そういえばヴィエルナちゃんはどこ?」
「あそこ」
「んー?……何言ってんのさヴィエルナちゃん。隣のブロックには名前、ないみたいだよ。もー緊張してるのぉ? 私と同じだねーえへへ」
「違うよ。あっち」
「え――」
ヴィエルナが静かに指差す先を、正確にとらえるマリスタ。
そこには確かにヴィエルナ・キースの名前があり――果たせるかな。
「わ……私達と同じとこじゃんッ?!?!」
第二ブロック第四試合。ヴィエルナの名前は、圭の二つ隣の組み合わせに刻まれていたのである。
「えっ、ちょ……こんなに知り合いが集まってることってある!?」
「ないよ」
「ない……よね。普通ね」
「うん。……普通なら、ない」
「え。……まさか」
「そう。この、第二ブロック。の、組み合わせ。は…………操作、されてるんだと。思う」
「…………うっそでしょ。マジでそんなこと出来ちゃうの? あれ、てことは私って」
「完全に、ターゲット」
「うっそ!?!??!」
「ろっくおん」
「オンじゃないよ!?! 迅速にオフして!! うっわ……『もしかしたら』程度に思ってたけど、まさかホントにこうなるなんて。あれっ、ってことはケイの相手は――――」
慌てて圭の一回戦における対戦相手を確認するマリスタ。先ほどは視界にすら入らなかったその場所には、ビージ・バディルオンの名前が書かれていた。
「バディルオンくん……って、誰だったっけ」
「図書室の、前で。ケイと、ケンカしてた……人」
「んん……? ごめん、あいつケンカしすぎててちょっとどんな人か思い出せない……」
「・・・マリスタも、だいぶ……ケンカ、してたけど」
「え?! む……ムカつく奴?」
「分からない、けど。…………彼と、よく。一緒にいた、よ」
もうすぐ二ヶ月ほど前の話になるとはいえ、あれだけの言い争い(※第9話参照)をした相手を毛ほども覚えていないマリスタに突っ込みたくて仕方なかったが、ヴィエルナは務めて冷静に――――彼の名を口にする。
「テインツ・オーダーガード君と」




