「Interlude―73」
それに付き従うようにして歩く義勇兵二名にしても、その威光とでも言うべき佇まいは、いち学生では及ぶべくもない。
その歩みは、まるで凱旋の如く。
無数に切られる、報道部による記録石のシャッター。彼らに歩み寄ったプレジア校長のクリクターがガイツと二、三言葉を交わし――――やがてガイツが義勇兵コースの学生に目を向けて歩み寄ると自然、場は水を打ったような静けさに包まれた。
「……戦う理由は問わない。この時世にひとつの理念で動く組織など、所詮表面的な団結しか持てん。きっとそのようなものは、我々には必要のないものだ」
ガイツの言葉が、ただ場に響き、浸透していく。
「いち義勇兵となる君たちに強制することがあるとすればただ一つ。それは『自分の命を自分で左右する』ことだ。……人に己の運命を決めさせるな。死さえも己の意志で選択しろ。そのための能力を測るのが、この実技試験だ。様々な観点から、君たちがアルクス足り得るかどうかを測らせてもらう。引き際を知り、自分を守ることさえ出来ぬ者に、人の命を救える確率は低い。自分を守り、他人さえ守る――――それが傭兵でもなければ騎士でもない、義勇兵という集団なのだと私は考える。戦うならば確実に撃破しろ。敵わないなら全力で撤退し、策を練れ。その力で、義勇の意思で、救えるだけの者を精一杯救え。これはそんな道に続く闘いだと理解しろ。私から語れることは以上だ」
ガイツが下がる。会場が万雷の拍手に包まれたのは、それからややあってのことである。
クリクターもニコリと笑い、倣って拍手をおくった後に右手を広げる。白い煙と共に現れた巨大な巻物が紐解かれ、受験者の前に白紙の羊皮紙が広がった。
「それでは、さっそくトーナメント表を公開します。試験はこの後すぐに始まりますから、皆さん各々、すぐに闘える状態で待機しておいてくださいね――――皆さんの健闘を祈ります。これよりプレジア魔法魔術学校、義勇兵コース実技試験を開始します!」
クリクターの高らかな宣言に呼応し、羊皮紙に青白い文字がにじみ出るように浮かび上がる。印字されたインクの色は次第に黒へと変化し――――対戦の組み合わせを、ハッキリと映し出した。
『!!!』
瞬きさえ忘れ、羊皮紙に自分の名前を探すマリスタ。程なく自身の名前を見つけ、すぐさま一回戦で闘う相手の名を視認する。
「――――――――――」




