「Interlude―68」
◆ ◆
「試合時間は十五分、評価は魔法全部に回避・判断・分析・白兵、勝敗の決定はギブアップ・気絶・監督の先生たちの判断・…………と、」
死。
「~~~~~~~~~~っっっ!!」
マリスタは頭を抱え、自身の浅い呼吸をどうしようもなく意識する。
(試験が終わる頃、私はもうこの世にいないかもしれない)
(この世にいても、この腕はもう私の体についていないかもしれない)
(二度と歩けなくなっているかもしれない。目が見えなくなっているかもしれない)
(かもしれない、かもしれない、かもしれない――――――)
どれだけ覚悟を口にしても、心は正直だ。
死。
その全ての終わりを意味する言葉が、マリスタには恐ろしくて仕方ない。
「け、け、け。ケイケイケケイ!」
「人の名前をテンポ良く呼ぶな。何だ」
「きょ、きょうはいい天気かなぁ?!?!」
「不安を俺で紛らせるな」
「一瞬でそこまで察したなら一言で会話を終わらせないで??! 行こう共に! つなごう会話! 紛らそう不安!」
「壁とやれ」
「ついに四文字一秒で終わらせた!!! 悪魔!!! あんたねぇ、ちょっと自分が不安を感じない性質だからって冷たすぎですよ! 私はねぇ、」
「あって当然だろ。不安なんて」
「う、」
「勿論俺も不安だ。舗装されてない道を歩けば、不安なんて常に付きまとう。自分で地固めしていくしかない」
「分かってんだよそんなことー!!! あー!!!」
「だったら少し黙って静かにしてろ馬鹿。無駄に体力を使うだけだぞ」
「うるさい正論バカ! 機械人間!」
「滅茶苦茶かお前は……ここまで来たら、積み上げたものを余さず発揮する以外、何もやれることはない。同調して欲しいなら他所に行け」
「つ、積み上げてきたもの……って言ってもさ――ぁ!」
マリスタは圭のローブに視線を移す。たった二カ月前に渡されたはずのそれは、当時の面影など欠片も残さないほど色褪せ、ボロボロになっていた。
(比べて、私のは――あぅっ!?」
マリスタの背を、ドスリと重い衝撃が打つ。
圭が目をわずかに見開く。数歩よろけて振り向いたマリスタの目に映ったのは、――五才以下の証である、黄色いローブを着た幼い男の子だった。
「な――年少クラスの子!?」
マリスタにぶつかって転び、四つん這いになっていた少年は即座に起き上がり、マリスタと圭の顔を確認する。その目は切迫を湛えていて、その迫力に一瞬気圧されたマリスタがぽかんと口を開けた時には、少年は――――彼女の洗い立てのレッドローブに掴みかかってきていた。
「っ!? な、」
「ぼくをたすけて。おねえちゃん、おにいちゃん」
「……!?」




