「Interlude―67」
「私、『もしかしたらこうなるかもしれない』って少しだけ思ってたのに、言わなかったから」
「んなの、どうなるかなんて誰にも分かんないわよ。誰も気にしてないって。……んでも、もし観戦はやめとくって人が多いなら、あたしはみんなと一緒に行くけど?」
「え……いいのそれで」
面食らった様子でシータ。エリダはニカリと笑った。
「いいってことよ。一人で見てるよりはみんなと騒いだりダベる方が性に合ってるし、結果はいずれ出る――――」
「わ、私は見るっ!」
「うぉおぅ!?」
「あっ……ご、ごめん」
パールゥが恥ずかしそうに眼鏡を持ち上げる。システィーナがくすくすと笑った。
「そうね。今年は特に気になるし、私も残ろうかな」
「私も」
「わ、私は……」
シータがちら、とエリダ、パフィラを見る。二人が笑うと、シータも小さく息を吸い込み、頷いた。ファレンガスが静かに口角を持ち上げた。
「よっし! それじゃ、気合入れて応援しますかね!」
「だれをー??」
「アマセに決まってんじゃん! ぶちかませぇアマセッ!!」
「へ、下手に誰応援するかとか、言わない方がいいんじゃ……?」
「言えてる」
「うるさいなー。次妙なのが来たらあたしが守ってやるから。ていうか、全身からアマセLOVEオーラを出してるパールゥちゃんに言われたかないんですけどー?」
「ちょ――ちょっとエリダっ!!」
「なはは! まぁでも、気にしててもキリがないしねー」
「…………終わるのかな。この『争い』」
「ん?」
シータの言葉に、システィーナがちら、と視線を投げる。
「実技試験が終われば、昔みたいに穏やかなプレジアに戻るのかな、って」
「昔のプレジアに差別がなかったわけじゃないわ。さっきのあなたがそうだったみたいにね」
「…………、」
「これまで以上に悪化して溝が決定的になれば、プレジアがなくなっちゃう、なんてことだって考えられないではないし。正直、希望的観測に過ぎるわね。そういう考えは。…………でも、きっと戻るわ」
「え、、?」
「ふふ。でも、個人的には――――平民が勝つとか、貴族が勝つとか。それ以外の結末があればいいなって、私はそう思ってるよ」
「それ以外の、結末……?」
「うん。具体的にどうって訳じゃないけど、ね」
「さて、戻るとするか。……しかし、言っても仕方ねぇことだが。こんな時にまで生徒会長が不在とはねぇ。そろそろ『公務』にもケリがつかねぇもんか……」
去っていくファレンガスの後ろ姿を、システィーナは横目に見送る。
事態の行く末は、最早誰にも予想はつかない。




