「Interlude―63」
「んお? そいえばさー。演習場の周りにあるのって、もしかして……観戦席?」
パフィラが目を凝らし、記録石が映す映像の背景を見つめて言う。
「そーよ。あたしらは危ないから近寄らないの」
「危ないの? だって、演習場はしょーへきで守られてるんでしょ? 近くで見れるなら私行きたいな。あんなにガラガラなんだしさ」
パフィラが観客席を指して言う。指摘通り、大演習場に備え付けてある観戦席に足を踏み入れている者はまばらだ。一見、なにかしら試験の関係者なのではないかと見紛う程である。
「はー……知らないの? それとも忘れてるの? パフィラってたまにボケボケだよね」
大きなため息をつきながらシータ。パールゥが苦笑した。
(い、いつもな気もするけどなぁ……)
「いい、パフィラ。大切なのはその、『観戦席がガラガラ』ってことだよ」
「ん??」
「この広い食堂でも、こんなに人がごった返してるんだよ? それなのに、大演習場に一番近い観戦席がガラガラ……そんなの不自然よね?」
「うん、だから行かないのはオカシイって言ってんじゃんかー、わたしー」
「あぁもう、だからっ。あんまり人がいない理由を考えてって言ってるの!」
「シータほら。怒んない怒んない。ゆっくり説明してやんなよ」
「もぅぅ……!」
「実技試験。たまに、すごい魔法のぶつかり合いが起こるよね」
「ぅえ? リア」
「演習場の周りに障壁はあるけど……昔、あの障壁が、試合の途中に破られることがあったの」
「ええ!??! そういうこと!?」
「やっとわかったか、もー」
「どーどー、よしよし落ち着きな」
「んー……!」
「その時、魔法の余波が観戦席も巻き込んで、けが人が沢山、出たんだって」
「うわ……私行くのやめたわ!」
「軽いわねアンタ……マジで忘れてたの? ずっと実技試験見てきてんじゃないのよ」
「忘れてたわ!!!」
「義勇兵コースの人達は、文字通り命を懸けて戦ってる。試験評価のために先生と、アルクスの人が監督官として付いてくれるけど、命の保証はそれだけ。だから……観戦席に被害が及ばないとは限らない」
「だからっ、あそこに行こうとするのは報道委員か風紀委員か……じゃなければ、よっぽどの無知か命知らずだけってこと」
(やっぱり合わないのね……この二人)
ジロリ、とパフィラを見るシータに、システィーナはため息を吐いた。当のパフィラはヘラヘラと照れたように笑うばかりである。
「……でも。今回ばかりは、確かにあっちの方がいいかもしれないわね」
「え――」




