「Interlude―61」
マリスタの姿は、すぐに彼女らの目に留まった。
「おお見つけたぞー! ねえみんな、あれマリスタ――」
「…………マリスタ、だけど」
前髪を上げ、広いおでこを持つパフィラが動きを止める。黒髪のリアも同じく映像に映るマリスタを見上げ、眉をひそめた。皆が一様に、マリスタの姿に目を凝らす。
彼女たちがすぐにマリスタを見つけられたのは、マリスタだけが映像の中を――大演習場を落ち着きなく、ぐるぐるぐるぐると歩き回っていたからである。
視界の中で動いているものに視線が生きやすいのは、人間の常である。歩き回っては、どこか一方に視線を飛ばす。そんなことを何度も何度も続けているマリスタが、食堂内で――恐らくは、大演習場内でも――悪目立ちしているのは容易に想像できた。
システィーナが、口だけで苦笑する。
「あの子……メチャクチャ緊張してるわね……」
「雰囲気に飲み込まれてる」
リアが頷き、静かに同意した。
「これだけの人が見てるんだもん、そりゃ緊張もするわよね」
「こんなに人に注目されるの、たぶん初めてだろうし……うう。私がマリスタの立場だったら倒れちゃうかもしれない」
「……こう言うと、アレかもしれないけど。一回戦で負けそうな顔、してるよね」
「シータあんた!! ハッキリ言い過ぎるのも大概にしなさいよ!」
「ご、ごめんてば!!」
「……でも実際、その可能性は高いでしょうね」
「システィーナまでっ」
「うおー。相手が弱っちい奴なことを祈るだけだなー」
「あんたたちね……」
「ま、まぁでもっ。勝つことばっかりが、この試験の評価項目じゃないんだし……」
「えー? そうなんだっけ?」
パフィラがポカンとした顔でパールゥを見る。「あ……」と一瞬困惑の表情を見せたものの、パールゥはくい、とメガネのフレームを持ち上げ、口を開いた。。
「えっとね……実技試験は、確かにトーナメント形式で行われるから、どうしても勝ち負けがついちゃうんだけど……負けちゃった人が、必ずしも悪い評価になっちゃうとは限らないの」
「んー?? 負けちゃった人がいい評価になんの?」
「パフィラあんた……毎回一緒に見てたのに、そんなのも分かってなかったの?」
「んははー! 私勝ち負けしか見てなかったから!」
「なんじゃそりゃ……」
「ふふ。まぁ、見方は人それぞれよね」
「つ、続けるよ?……実技試験の評価項目は沢山あるの。具体的には……えっと。魔法術、判断、分析、回避……後は――」
「白兵」
「そう、白兵」
パールゥの言葉をリアが補足する。シータが首を傾げた。




