表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/1260

「Interlude―54」



「び……びえるな、ちゃん?」

「顔。赤いけど。大丈夫?」

「だぁ、は……ぁあ、大丈夫ですよ?!」

「そう」



 ヴィエルナは声のトーンだけでマリスタへの配慮はいりょを伝えると会話を打ち切り、マリスタのとなりのブースに入っていく。

 ややあってシャワーの音が聞こえ始め、シャワー室はマリスタより一足先に現実へと戻っていった。



(…………みょうなタイミングで現れないでよね。もー)



 やがてマリスタも平静を取り戻し、両手で(ほお)(はさ)むようにして(はた)くと、湯せんへと戻る。



「そう言えばヴィエルナちゃん、なんでわざわざ訓練施設のシャワーに来たの?」

「私、二十二(そう)調練場ちょうれんじょう、いたの。マリスタ、上?」

「あー、なるほどね。どーりで会わなかったわけだ。うん、私二十三層にいた。ケイと一緒だったの」

「よく、一緒。なれたね。()んでた、のに」

「へへー。でも、一緒の場所だったってだけだよ。一緒に訓練はしなかった――あいつ、実技試験に向けた仕上げでいそがしいみたいだったから。過呼吸(かこきゅう)かってくらいゼーゼーいってたよ」

「……それ、見て。どう思った?」

「…………んー?」



(……さすがだなぁ、ヴィエルナちゃんは。私のこと、お見通しって感じ)



 マリスタには、ヴィエルナの笑みが透けて見えるようだった。



「……もちろん、私も頑張がんばんなきゃなーって思ったよ!」

「ふふふ、その意気。実技試験じつぎしけんまで。がんばろ」

「がんばろー!……ん~っ!」



 びをして壁に両手を付き、顔を(うつむ)かせて笑うマリスタ。



 ――その視界に入ってきたのは自分の身体(からだ)

 マリスタはおもむろに、自分の鎖骨(さこつ)に手で触れる。



(…………戸のせいで、全部は見えなかったけど。ヴィエルナちゃん、めっちゃ鎖骨浮き出てたなぁ。スリムでうらやましい。こうやってかがむと、ちょっとぷよっとしてるんだよなぁ、にくたらしい……)



 マリスタの思考は、先ほど圭の身体を妄想(もうそう)した時と、きっちり同じ道をたどり始めた。――今度は、純粋じゅんすいな興味の方が若干(じゃっかん)強めではあるが。



 以前見た、ケイとヴィエルナとの戦い。

 自分と同じくらいの身長で、自分よりもずっと華奢(きゃしゃ)に見える少女から飛び出した、ケイの英雄の鎧(ヘロス・ラスタング)さえ(つらぬ)威力いりょくこぶし



 ――あれだけの技なんだ。きっと相当な訓練をして、ものすごく、こう、しなやかな体を持ってるに違いないわ――



「………………ねぇ、ヴィエルナちゃん。ヴィエルナちゃんって、体(きた)えてる?」

「うん。がんばってるよ。マリスタは?」

「あー……私? 私は……」



 再び、自分の体を見下ろす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ