「Interlude―48」
「『学校を悪い意味でかき乱す、顔はいいが浮いてる変な奴』――それが大勢だったケイさんへの認識が、少しずつ良くなっている気がする。どうせそのようなことを言いたいのでしょう、システィーナ」
「さすがはプレジア三位の頭脳。その通りよ」
「さすがはプレジア二位の巨乳。脳の栄養が乳にいっている分考えが透けて見えるようです」
「?!?!」
(い、一位誰なのかな……)
「ま、ケイさんにとっていい方に転がりつつあるのは認めざるを得ませんけれど。こうして目に見える形で実力を示されると、少なくとも表立って彼を悪く言う者たちは鳴りを顰めますからね。巨大な鯨は誰にも攻撃されないのと同じです――――ま、彼程度の小さな鯨では鮫に食われるのがオチですけどねっ☆」
「そうね。確かに、これでアマセ君が変な人たちに絡まれなくなるかと言えば、そうとも言えない」
「ハッ。むしろ結果によりゃあ、今以上に爪弾き者――いや。それどころか、本当にプレジアからいなくなっちまう可能性だってあるな」
「ど、どういうことよそれっ」
マリスタがロハザーに詰め寄る。
ロハザーは「分かんねぇのかよ?」と笑い、自身の短い髪の毛をかき上げた。
「今度の実技試験の結果で、奴の今後も大きく変わるってことさ」
「何言ってんの? たかが試験で、あいつが学校に来れなくなるほど参っちゃうわけが――」
「マジでわかってねぇなアンタは。気分はまだ魔術師コースかよ?――精神的なことを言ってんじゃねぇ。こいつは義勇兵コースの試験だぞ? つまりあいつが不幸な事故で死んだとしても、それは特に問題にはならねぇってことさ。……まさかあんた、そんなことも忘れてやがったワケじゃ無ぇだろうな?」
――ロハザーの目が、マリスタを鋭くとらえる。
かすかに怒気さえにじむその目に気圧され、マリスタがわずかに後ずさった。
「わ、忘れてなんか――――、っ」
「?」
反射的に何かを言い返そうとしたマリスタが、ゆっくりと口を閉じる。
言葉を封じ込めるように飲み込み、今度はしっかりとロハザーを見た。
「――ごめん。私忘れてた」
「……あ?」
「忘れてたよ。実技試験が命がけなこと。だから謝る。ごめん」
「な、何だと?」
「もう忘れないから。私の命がかかってることも、アンタやヴィエルナちゃんが命をかけて闘ってることも。ホントにごめん」
ごまかしのない、真っ直ぐな言葉が、ロハザーに真正面からぶつかる。




