「Interlude―45」
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「……全教科、満点?」
つぶやいたのはマリスタである。
翌日の放課後。教室区画の廊下に張り出された筆記試験の結果を見にきたマリスタとパールゥ、システィーナは、ただあんぐりと口を開けて、成績表の一位の欄にある圭の名前を見つめていた。
無論、その結果に騒いでいるのは彼女達三人だけではない。
自分の成績を見にきた一般生徒も、ついでに「異端」の成績を嘲|うためにやってきた貴族も。皆が皆、成績表の前でどよめきを起こしていた。
「あらあら。どうしたのですか、マリスタ。珍しく成績表の前で固まったりなんかしてっ」
「あ、ナタリー」
「気を落とすことないですよ。頑張って勉強したといっても、試験で結果を出せるようになるまでにはやはり時間がかかります。今回駄目でもまだ試験は三回ほど残っている訳ですから、めげずに次また頑張れば――」
「ナタリー、そうじゃなくて」
「えぇえぇ、大丈夫ですよ。勿論私はいつもの通り一位か二位でしょうから、そこを見にきた訳ではありません。あのいけ好かない金髪大根役者さんが、あれだけ頑張るフリ的パフォーマンスをしておいて果たして一体何位なのかをこの記録石でバッチリ記録、明日にでも、努力の様子を編集したダイジェスト映像と共に全校に放送――――――――あゃ?」
よどみなくしゃべっていたナタリーが圭の順位を確認し、素っ頓狂な声を出して硬直する。
圭の下には二位でナイセスト・ティアルバー、その下に三位でナタリー・コーミレイの名前。――三位などという低い順位に甘んじたのは、ナタリーにとって初めてのことである。
「す……すごい、よね。アマセ君。ティアルバー君に、十点以上も差をつけて一位なんて」
「……………………、なるホど、ナるほど。やけにいけ好かない風紀の連中が成績表に屯していると思いましたが、はァ。そういうことですか、ほぉォ」
「落ち着こうね、ナタリー。……でも、ホントに凄いよねこれは。努力するだけで、全教科満点なんてとれるものなのかしら」
「ホントにすごいよ、アマセ君……私なんて、また五十四位に落ちちゃったのに」
「五十四位も十分すごいじゃないの」
「に、二十六位さんに言われてもイヤミだよっ」
「素直に受け取ってよ、もー」
「あいつ……ちゃんとリシディアの言葉、読み書きできるようになってるってことだよね。魔術も使わずに」
マリスタが、成績表から視線を離さずに言った。




