表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/1260

「Interlude―44」



「今回は記述式きじゅつしき――歴史の流れを概説(がいせつ)し、更に事象じしょうを多角的な方面から検討けんとうした上で、当時の国策(こくさく)是非(ぜひ)について言及げんきゅうさせる論述ろんじゅつ問題まで出してた。アマセのことは知ってたから、論述くらいは多少甘めに採点(さいてん)してやるか、なんて思ってたんだがよ……とんでもねぇ。こいつの論述、文句の付け所さえなかったぜ。ぶったまげたよ」

「じゃあ、どういうこと……あの子、もうこの国の言葉を完璧かんぺきに……」

「あいつ……とことん変わった野郎だな」

「確かに、授業中の様子といい休み時間の様子といい、どこを切り取って見ても変わり者にはちげぇねぇだろうがな。アマセの奴は……こと学ぶことへのモチベーションにかけちゃ、このプレジアの中で……いや、ひょっとすると大学府(だいがくふ)を含めても、これほど熱心に勉強してやがる学生はねぇかもしれねぇよ」

「ほう……そうでしたか。私の教科だけでは(・・・・・・・・)なかった(・・・・)んですね」

「え……」



 振り返るシャノリア。声を発したのは魔法生物(まほうせいぶつ)担当のアドリーだ。

 アドリーは自分の机に戻ると、机上きじょうに積まれていた紙のたばをパラパラとめくり、よどみない動作で一枚の紙を取り出す。

 ファレンガスと同じく、それはテストの解答用紙。

 シャノリアが引きつった笑顔を浮かべた。



「ま……まさか」

「そのまさかですよ。魔法生物学(さん)――彼、ケイ・アマセ君は満点を取っています」

「…………バケモンか、あのガキは。この短い期間にどんだけ――――」



 たまらずトルトがそう()らす。しかし彼の横にいるシャノリアの頭は、(すで)に別の教師へと移っていた。その教師は彼女の目線に気付き、小さく(うなず)くと――机上から圭の解答用紙を取り出し、かかげてみせた。シャノリアの予想は的中する。

 そのテストも満点だ。



 ――シャノリアは、視線を職員室内に(めぐ)らせる。

 教師たちは次々にケイの解答用紙を取り出し、それを全員に見えるように持つ。



 魔術学まじゅつがく(さん)

 応用属性(おうようぞくせい)魔法学(まほうがく)。|

 現代国語(げんだいこくご)

 算術(さんじゅつ)

 魔法理学Ⅲ(まほうりがくさん)

 魔素学Ⅱ(まそがくに)

 魔法学Ⅲ(まほうがくさん)

 水属性みずぞくせい風属性かぜぞくせい魔法学まほうがく



 そのすべてが、満点。



 シャノリアが動く。

 自席へと戻り、採点さいてん待ちの解答用紙の中から圭のものを引っ張り出し、全教師の目が注がれる中、無言で採点を開始する。



「――――――――、」



 やがてシャノリアの手が止まる。

 全員が固唾(かたず)を飲んで見守る中、彼女は興奮気味に解答用紙を掲げ――震え声で、告げる。



「…………全教科、満点です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ