表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/1260

「Interlude―41」



 シャノリアが言う。その言葉が(はら)むのは、どちらかと言えば非難(ひなん)めいた色。

 クリクターは静かに、首を横に振った。



「苦しませたいのではない。乗り越えて欲しいのです。大切なのは差別を根絶(こんぜつ)することではなく、差別や偏見に負けず、それらを打ち()つ手段を持つことです。それにはまず、誰しも必ず対峙(たいじ)することになる差別や偏見を、それに翻弄(ほんろう)される人間のおろかしさを、受ける傷の痛みを知っておかなければならない。――――そして誰に教えられるでもなく、彼等かれら自身の心で感じ、考え、探り、解決方法を見つけることをしておかなければ。――そう、私は思うのです」

「でも、そりゃあまりに(こく)じゃないですか、校長。あなたの言ってるこたァつまり、大人(俺ら)でさえ完全にゃ出来ない問題の解決を、子どもらに押し付けようってことで――ザードチップ先生の言ってることそのまんまだ。もしそうなら、悪いが俺はあなたの言ってることに――」



 ファレンガスが口を(はさ)む。クリクターが彼を見た。



「そう。彼らは大人ではなく、まだ未熟みじゅくな子どもです。だからこそ――そこに宿る意志は、我々とは比べ物にならないほど純粋(じゅんすい)だ。そんな彼らだからこそ、たどり着ける解決法があるかもしれない。しかし幼い彼らは、意志より感情に支配されてしまいがちです。……であれば感情(そこ)にこそ、我々教師が教え、また学ぶべきことがある。彼らの姿やことばから、我々もまた考え、探るのです――――あの内乱(・・・・)を止められなかった我々大人が、このプレジアの中でもう一度、あの時と同じ負の感情(・・・・・・・・・・)に向かい合い、どうすべきだったのか、どうするのかを再び選択するのです」



 クリクターがファレンガス、次いでアドリーを見る。ファレンガスが息と共に(うな)りを()らした。



「………………」



 他の教師の中にも、どこか表情に影を落とす者が散見(さんけん)される。

 彼らは一様(いちよう)に、差別と偏見が引き起こした未曽有(みぞう)戦禍(せんか)に思いを()せていた。



 ――――二十年前の戦争。

 魔女と人間の全面戦争ぜんめんせんそうとなった、「無限(むげん)内乱(ないらん)」である。



「……ダメだ。俺にゃあやっぱり、年寄りの自己満(じこまん)のためにガキどもを利用してるようにしか聞こえねぇです、校長」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ