「は?」
「――――は?」
心の声が、そのまま口に出てしまう。
「そう緊張しなくて大丈夫だってば。魔力を練ったり、魔力回路に異常はないか確かめたりするだけだから」
何でもないことのように言い、ニコニコと笑うシャノリア。
俺は「記憶を失った」などという、考えてみればあまりにも安直で稚拙な嘘を吐いてしまったことを、早々に後悔し始めていた。
魔力を練る。ぜえれとやらに異常がないか確かめる。
…………どれもこれも、一体何のことなんだ。
◆ ◆
「……字も書けねーのか? あいつぁ」
「彼、記憶を失っているようなんです。自分の名前以外は、ほとんど忘れてしまっていて」
「記憶喪失ねぇ……」
「うん、これでおっけー! 大変だね、記憶をなくしちゃってるってのは。字も書けないんだから」
「……助かったよ」
マリスタの助けを得て、検査に必要な書類をなんとか記入し終わり。
ようやく、検査の準備をしていたらしいトルトとシャノリアが俺の前に現れた。
「さて。さっさと済ましちまおう。お前さんの魔法の実力、見せてもらうぜ」
「……これで何かが決まるんですか?」
「質問を許した覚えは……」
「等級が決まるんだよ。クラスとは別に決まってるの」
そう自慢気に言ってから、マリスタはトルトの視線にハッと口をつぐんだ。トルトがため息を吐き、シャノリアがクスクスと笑う。
「今、マリスタが赤いローブを着ているでしょう? あれは学校から支給された制服みたいなものなの。中等部の生徒は、成績の差でローブの色が違ってくるのよ。レッド、グリーン、ベージュ、グレー、そしてホワイト……この順で等級が高くなるわ。もちろん成績がよくなれば等級は上がって、悪いと下がっちゃうからね」
「そうか。成績か……」
……待てよ。ということは、マリスタのやつ……最下位の色じゃないか。
マリスタへと顔を向ける。同時にマリスタが顔を逸らした。
こいつ……偉そうに知識をひけらかしてたくせに。どんな顔をしてるか大体想像がつく。
「同じ授業でも、習熟度別なことがあって。その時は、等級ごとに分かれて受けることになるのよ」
「つまりこの検査は、差し当たってお前さんがどの色のローブを着ることになるかを見るためのモンだってことだ。ホレ」
トルトが、顔程の大きさもある硝子玉を投げ渡してくる。両手でズシリと受け取った冷たい感触のそれは、何の変哲もないただの硝子玉に見える。
「さ、スタートだ。魔力込めてみろ、全力でな。お前がどのくらいの力を持っていても――」
「魔力とは何ですか?」
俺にとっては至極、至極当然な問い。
しかしそれが、
『……………………は?』




