「あぁあぁあぁ」
ロハザーとマリスタの声が重なる。
ヴィエルナだけは何のことやら解っていない様子で首を傾げていたが、そう見て取れたのは、ヴィエルナ以外の奴等が――勿論、図書室にいる全ての学生達を、含む――、皆一様に色めき立っていたからである。
「ちょ――ちょちょちょ、ちょっっっっっとケイ!!!!!! ああああん、あんたねぇ!!!! 散々鈍感気取っといて結局?!?! このフケツ! 色ボケ! ジゴロ! タラシ!!!!!」
「たらし……?」
「テメェアマセテメェ!!!! ぱぱぱっぱ、パーチェ先生っていやぁ一部界隈からカルト的人気を誇る――――お前ェ!!!! 即刻魅惑の検査だ生徒指導室に来いコラ!! ヴィエルナっ、そいつから離れろ! ろろ、ローラクされるぞ!!」
「じごろ……?」
「おい聞いたかよ、やっぱりアマセの奴そういうことしてんだってよ!!」「い、今パーチェ先生、何て言ったの……?」「つ、つまり、ケイ君とリコリス先生は、その……そういうことよ!」「うっそだろ、パーチェ先生のあのカラダがあんな顔が良いだけの転校生のモンに……?!?!」「おいしっかりしろ! 意識を保て!」「許せねぇあの野郎、俺達のパーチェ先生を!」「あぁ、ぜってぇブチのめしてやる俺達リコリスFCの怒りを思い知らせてくれる!!!」「そんなことしたってリコリス先生はあんたたちのものにはならないでしょうに……」「ていうか、生徒と教師がってヤバくない? ウケるんだけど」「でもリコリス先生とケイ君、なんかお似合いじゃない? 美男美女、映えるわ~」「いーえ絶対認めない! ケイ君は私達のアイドルなんだからっ」「はいはい落ち着いて」「『異端』の奴、やっぱり魅惑を使ってやがるんだ――風紀委員出動、奴を取り押さえろ!!!」「この機を逃すな、何としても二人が一緒の写真を撮るんだ!! 行け貴様等、報道委員会の誇りと明日の大スクープにかけて!!!」
――フラッシュと腕章と、色とりどりのローブと。
ライブ会場もかくやと言わんばかりに、急激に沸騰し、騒がしくなる図書室。
息もぴったりに詰め寄ってくるロハザーとマリスタ。
どこから現れたのか、カメラを構えてこちらにしこたまフラッシュの雨を降らせる恐らく報道委員の面々。これまたどこに居たのかこちらに向けて怒鳴りながら、人混みを掻き分けてやってくる風紀委員。囃し立てる、騒ぎ立てる、怒鳴り散らす、泣き喚く、どさくさでやたら触ってくる――――人の波、波、波。
そして気が付けば、リセルの姿はどこにも見えなくなっていた。
…………マジで氷漬けにして叩き割るぞ。あの悪女めが。




