「魔法学校、ゆえに」
「……言葉は通じるのか?」
『む。外国の子か』
事情を察した様子で校長が歩み寄る。歩み寄ってくる校長の指先が光るのを、俺は見逃さなかった。恐らくはあの、通訳魔法。
「はじめまして。私はクリクター・オース、この学校の校長をしている。君は?」
「ケイ・アマセです。シャノリア・ディノバーツ先生の紹介で、このプレジア魔法魔術学校への入学を申し込みに参りました。受け取っていただけますか」
そう言って、シャノリアから渡された封筒を両手で差し出す。校長はしわだらけの顔で人の好さそうな笑みを浮かべ、それを受け取った。
その場で丁寧に封を破り、眼鏡をずらして中の紙に目を通すと、俺へと視線を戻す。
「――もちろん。君に魔法を学びたいという意思がある限り、プレジアはそれを受け入れよう。ようこそ、プレジア魔法魔術学校へ」
「ありがとうございます、校長先生!」
「……ありがとうございます」
シャノリアと共に頭を下げる。
入学試験のようなものがあるのではと身構えていたが……こんなにあっさり許しが出るとは思わず、少々面食らっ――
「では……ザードチップ先生。丁度いい、君がディノバーツ先生と一緒に、彼の魔法術検査をやってくれないか?」
――マホウジュツ……検査?
「え?……私がですか?」
「今、君の頼みを受け入れたところじゃないか。ギブアンドテイクは嫌いかね?」
わざとらしい笑顔でそう返す校長に、嫌そうな気配を隠そうともしない長身痩躯。ザードチップと呼ばれたその教師は観念したのか、極めて面倒臭そうに俺に向き直った。
「トルト・ザードチップだ。今からディノバーツ先生と一緒に、お前さんの魔法術検査を担当する。ま、ほどほどによろしく」
「……はい。よろしくお願いします、ザードチップ先生」
「はいはい。じゃ、ディノバーツ先生……私ゃ先に行ってるんで」
「はい。ありがとうございます、先生」
「いいですって。……たった今これも仕事になったから」
トルトは扉に向かいながらひらひらとシャノリアに手を振ると、大きな欠伸をしながら校長室を出ていった。……相当癖のある教員だな。あれは。
「では、失礼します。アマセ君、行きましょう」
「シャノリア……先生」
「ふふ、呼びにくいならシャノリアでいいわよ。会った時もそうだったものね」
「ああ……ありがとう。これから、何を検査するんだ?」
「別に変わったことをしたりはしないわ。魔法術検査……名前の通り、あなたの魔法の素養や程度を確かめるだけよ」
――――は?




