「Interlude―32」
◆ ◆
「ったくもー……勝手なんだから」
「いやいや……マリスタあなた、アマセ君に時間を割いてもらってたんでしょう? だったらここはお礼を言う場面だと思うけど」
「う……そっか。うん。そうね」
「……再三聞きますけど。本当にどうして、あんなことがあった後でも彼に執着するのですか、マリスタ」
「しゅーちゃくだなんて人聞き悪いなぁ……だからずっと言ってるでしょ。ヒミツだって」
「……………………」
「そ、そんな目で見ないでよ! 別に大した……アレじゃないったら!」
(言い淀んだわね今)
「血反吐と共に絶縁状を叩き付けられたも同然の状態で、よくぞまぁそこまで執心出来るなぁとしか思えないんですけどね……ま、その点に関してはケイさんの方が大概ですが。あれだけ突き放しておいて、一緒にしれっとテスト勉強なんてしてるんですからね」
「いいのもうそこは突っ込まなくても!……んでもそうやって、私から目だけは離さないでよね、ナタリー。システィも」
「は、はい……?」
ナタリーが、マリスタにしか見せない呆けた顔で声を漏らす。
マリスタがにこりと笑った。
「私、必ずあいつと並び立つくらいに強くなってみせるから。約束する。……だから実技試験、楽しみにしててよね」
『………………………………………………………………』
「いやいやいや、長いよ! 沈黙長い! 意外な言葉だったとしても長すぎ!」
「だって……ねぇ。ナタリー」
「ええ。落ちてたパンでも食べたんじゃなかろうかと思う程ですが、いかがですシスティーナ」
「落ちてるパンは食べるかもしれないけど……この変わりようにはびっくり」
「食べませんけど?!」
「冗談だってば。でも、そうね。少なくとも、努力に前向きになれたのは、いいことだと私は思うかな。素敵よ、マリスタ」
「でっしょう!? ぬふふ、私だってやれば出来るってこと、証明してやるんだからっ!」
「その意気! 期待はしてないけど!」
「して?!?! そこはわずかながらでもして?!!?」
小さく盛り上がる二人。
しかしナタリーは難しい顔を崩すに至らず、騒ぐ二人を冷めた目で眺める形となった。
彼女は大きく息を吸い、モヤモヤとした気持ちをリセット――
「…………ああして人を置いてきぼりにするから、」
――もとい、若干の復讐を以て解消しようと試みた。
「パールゥもケイさんを追いかけてしまっているのですかね。まんまと乗せられて、不憫なものです」
「……ん? 今、パールゥって言った?」




