「熱は溶かす」
「いたたた……もう。その凍らせるやつ、ほんと痛いわよ。完全にくらってたら、体ごとバラバラに出来ちゃうんじゃない? 加減しないと……っ!! く、はぁ。ダメだ。もう立ち上がれない。あれ。さっきまであんなに体は元気だったのにな」
……どうやらあいつも、それは同じ様子。あれだけ魔力にあかせた戦い方をしたのだから、それも当然だ。
俺のような凡人には到底真似できない物量戦法――――
〝私がこのコースに来たのは、ケイと並び立つためよ〟
「……相討ち、か」
――――子細はどうあれ、それは達成された、ということか。
〝一人で立ちたいならせめて心配されないようにしたらどうなのッ!〟
〝私は、あんたの友達になりたい〟
〝アンタは私の恩人なの。そんな大事な友達と、私は並んで立ってたい。一緒に歩いていきたい。道を間違えてる時は、止めてあげたい!〟
…………或いは俺が強ければ、あいつも俺を遠くから眺めるだけだったのかもしれない。
甚だ不本意な話だが――余計なことを考える余裕がない今の頭で思い返してみれば、マリスタは俺よりよっぽど筋の通ったことをして、言っているようには見えないか。
……バカだったのは、俺の方かもしれない。
「あれ??? ほんと力入んない! んん~っっっ」
「…………あまり力むな、馬鹿。この間の俺のようになりたいか」
「えっ!! え、じゃあこれって……」
「そう。その感覚が魔力切れだ。……義勇兵コースの学生でいるつもりなら、その感覚をよく覚えておいた方がいいぞ。死にたくなかったらな」
「う……上から目線だなぁ、自分だって無理して倒れたくせに…………って。あれ。もう『魔術師コースに戻れ』って言わないの?」
「俺が言ったってお前は聞かないだろう。怒りを通り越して呆れた。言っても無駄な奴には言わない」
「ぐぬ……見てなさいよ、ケイ。私は諦めないからね。あっという間に強くなって、必ずあんたと並び立ってみ」
「勝手にしろ」
「せるからね――――え」
マリスタが口をあんぐりと開けて俺を見る。
穴の開きそうなほどに、見詰めてくる。
やっとの思いで首を動かし、視線を逸らした。
……いや、逸らす必要はないだろう俺よ。
堂々としていろ、その仕草ではまるで――
「い――今なんて言った? え??」
「?! お、おい。体は動かせないんじゃなかったのか這い寄ってくるな気持ち悪い!」
「いやいやいや。ちょ。え? 今さぁ。『勝手にしろ』って言った?? ってことはさぁ、私、ケイのそばに居ていいってこと??? 何???? 急にデレるの何?????」
「這い寄るなニヤニヤ笑うな曲解するな気色悪い。くっ……」
「動けないみたいだねぇ、うぅん?? そして、え??? 照れてない??? その顔は照れてない????? ねへへへ」
「気持ち悪い笑い方しやがってこの、魔力タンクが……」
「しひひひひ……あ。でももう限界だわ。緊張とけて急に……きつ。むり」




