「決着」
――――その立ち姿はまるで、勇者のように。
「私はもう、もらったから。だから今度は、私が与える側になる! 私がケイと一緒にいる! 私がケイと一緒に強くなる! 一緒に犯人を探すし、こらしめる!! それで、あんたが道を踏み外しそうになった時は――――ブン殴ってでも止めてみせる!」
「ほざけ――ほざけッ!!」
「ええ、いくらでもほざいてやるわよっ! あんたに復讐はさせないッ!!」
「マリスタァァァァッ!!!」
「ケイィィィッ!!」
水の弾丸が襲い来る弾幕の中を、俺は――精霊の壁を|展開したまま駆ける。
「まだよ――せやっ!!」
「凍の舞踏!」
「ッ!? また――」
水の棒を避け、再度左手で凍結させる。砕け、俺の視界に結晶と散る所有属性武器。眼前に迫るマリスタに向かって俺は――――拳を振り被る。
「くらわないよっ!」
マリスタが障壁を展開する。魔力の感じからして、物理攻撃を防ぐ兵装の盾。
かかった。
手を開き、障壁にベタリと触れる。
マリスタは、目と鼻の先。
「!? ちょ、打撃じゃ――」
「凍の舞踏ッ!!」
これまでで最大数の流弾の砲手が眼前に現れた。
氷の息吹がマリスタに直撃する。と同時に弾丸が掃射され、障壁が間に合わなかった俺の視界が群青に染まる。
「ごッ、ぶォっ、 、あっ、ぐっ!!――――が、あ――――!!!」
水圧。水圧。水圧。
魔弾の砲手は初歩の攻撃魔法だが、威力は肉体強化を使った状態でのパンチ一発に匹敵する。脳を揺らす弾丸の衝撃に体は地を離れ、低空で乱回転しながら弾丸を浴び続け――――やがて演習スペースの障壁に叩きつけられ、それでもなお弾幕は止まず――――痛みで体が麻痺し始めた頃、鼓膜はようやく静けさを取り戻した。
「、ぁ……っっ……!!」
白く掠れる視界を、意識を閉じないように必死になりながら、前方にいるはずのマリスタを見る。
マリスタは――――四つん這いになって、座り込んでいた。
見れば、その体は水浸し。
自分の背後に展開した流弾の砲手を、自分でも食らうことで凍結を破壊したのか。
「どこまでも力技な……っ、」
……体が動かない。覚えがある感覚だ。
恐らくこれ以上動けば、また血を吐いてしまうだろう。
――――……




