「こぼれる」
魔弾の砲手を躱すのに必死なマリスタに肉薄し、拳を叩き込む。雑に振るわれた棒を避け奴の胸に手を当て、
「ッッ?!?!??!?!?!?」
障壁を展開しようがない零距離から、凍の――
「どさくさに――――触ってんじゃないわよえっちーーーッッ!!!」
「!?」
マリスタが俺の手を力強く払いのけ、吠えると同時に――――何もなかった彼女の足元から、波紋が広がるように水飛沫が起こり、強い水圧と風を伴って弾ける。
体が宙を飛び、足で何とか倒れず着地した。
感情で爆発させた魔力に所有属性が反応したのか? 無茶苦茶をしやがって――――
「――凍の舞踏ッ」
横殴りの雨。飛沫の一部を繋げて凍結させて氷柱を作り上げ、マリスタの体目掛けて投擲――――
〝けいにーちゃん〟
「くっ――!」
……またも、疼痛。
「スキありッ!」
マリスタの棒を、握った氷柱で受け止める。
こいつ自身も、大した棒術の手ほどきを受けているわけではない。握り方や攻め方はチャンバラをやってる子どもと何ら変わりないし、ヴィエルナのような達人と違って隙だらけだ。
だから、問題はそこじゃない。問題は――――
〝ずっとずっと、俺が守るよ。父さんも母さんも、メイも! 約束する!!〟
――――疼痛は一体、何だっていうんだ。
「とりゃあああっ!」
「チッ――!」
棒と氷柱を打ち合う。
水が飛び、俺を、マリスタを濡らし、――氷柱は数合ともたずバラバラに崩れた。破片を手に取り、マリスタの目
〝この先きっと、あなたをちゃんと理解してくれる人が現れる。先生には解るの〟
痛い。
「ぁ――――っ」
「ガラ空きッ!」
「ッッッ!!」
横から首に巨大な衝撃。と同時に水の棒が弾け、俺の髪と服を水浸しにする。
――――違う。
「へっへ――今のは痛かったハズッ! どうよケイっ、私もやるもんでしょ!」
「――――違う」
「え?」
あいつは、俺を理解してなんてない。俺は、あいつを守ったりしない。
あいつが嫌いだ。あいつは邪魔だ。
俺が復讐者であるために、あいつは必ず切らなければいけないんだ――――!!
「俺はお前に何も与えない、」
「ケイ――あんた、なんて顔して――」
マリスタの声が聞こえない。
口が勝手に、動く。
「与える訳が――与えられる訳が無い。だって俺には何もないんだから! すべて――――」
こいつと俺の間に、もう言葉なんて必要ないのに。
「全部無くした俺に、何も求めんなッ!!!!」
「これからは私がいるからッ!!!!」
「!、!?」
 




