表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/1260

「こぼれる」



 魔弾の砲手(バレット)を躱すのに必死なマリスタに肉薄(にくはく)し、拳を叩き込む。雑に振るわれた棒を避け奴の胸に手を当て、



「ッッ?!?!??!?!?!?」



 障壁を展開しようがない零距離ゼロきょりから、凍の(ペク)――



「どさくさに――――触ってんじゃないわよえっちーーーッッ!!!」

「!?」



 マリスタが俺の手を力強く払いのけ、吠えると同時に――――何もなかった彼女の足元から、波紋はもんが広がるように水飛沫(みずしぶき)が起こり、強い水圧と風を(ともな)って弾ける。

 体が宙を飛び、足で何とか倒れず着地した。



 感情で爆発させた魔力に所有属性(エトス)が反応したのか? 無茶苦茶をしやがって――――



「――凍の舞踏(ペクエシス)ッ」



 横殴よこなぐりの雨。飛沫(しぶき)の一部をつなげて凍結させて氷柱(つらら)を作り上げ、マリスタの体目掛(めが)けて投擲(とうてき)――――



〝けいにーちゃん〟



「くっ――!」



 ……またも、疼痛(とうつう)



「スキありッ!」



 マリスタの棒を、握った氷柱で受け止める。

 こいつ自身も、大した棒術の手ほどきを受けているわけではない。握り方や攻め方はチャンバラをやってる子どもと何ら変わりないし、ヴィエルナのような達人と違って(すき)だらけだ。



 だから、問題はそこじゃない。問題は――――



〝ずっとずっと、俺が守るよ。父さんも母さんも、メイも! 約束する!!〟



 ――――疼痛(これ)は一体、何だっていうんだ。



「とりゃあああっ!」

「チッ――!」



 棒と氷柱(つらら)を打ち合う。

 水が飛び、俺を、マリスタを()らし、――氷柱は数合(すうごう)ともたずバラバラに崩れた。破片を手に取り、マリスタの目



〝この先きっと、あなたをちゃんと理解してくれる人が現れる。先生には解るの〟



 痛い。     (何が?)



「ぁ――――っ」

「ガラ空きッ!」

「ッッッ!!」        (どこが痛い?)



 横から首に巨大な衝撃。と同時に水の棒が弾け、俺の髪と服を水浸(みずびた)しにする。



 ――――違う。



「へっへ――今のは痛かったハズッ! どうよケイっ、私もやるもんでしょ!」

「――――違う」

「え?」



 あいつは、俺を理解してなんてない。俺は、あいつを守ったりしない。



 あいつが嫌いだ。あいつは邪魔だ。



 俺が復讐者ふくしゅうしゃであるために、あいつは必ず切らなければいけないんだ――――!!



「俺はお前に何も与えない、」

「ケイ――あんた、なんて顔して――」



 マリスタの声が聞こえない。

 口が勝手に、動く。



「与える訳が――与えられる訳が無い。だって俺には何もない(・・・・)んだから! すべて――――」



 こいつと俺の間に、もう言葉なんて必要ないのに。



「全部無くした俺に、何も求めんなッ!!!!」



           (そうすれば、何も失わ)      (ずに済むんだ)



「これからは私がいるからッ!!!!」

「!、!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ