「ただ、倒すため」
「ケイはすごいよ。たった二週間で、私をこんなにも変えてくれちゃってさ」
「俺は凄くなんてない。恩人でもない。勘違いするな、さも俺が変えた風に言うなっ。変わったのはお前自身だ。お前が変わったんだよ」
「…………あんたがそうやって。偏見を持ったり決めつけたりしないで、『お前は才能を持ってる、でも努力をしていない』って、ちゃんと言ってくれたから。ありのままの私を見つめててくれたから、私も気付けたの」
笑ってやがる。
「そんなものはただの御託で……」
「だから、アンタは私の恩人なの。そんな大事な友達と、私は並んで立ってたい。一緒に歩いていきたい。道を間違えてる時は、止めてあげたい! そんだけ!!」
「――――――――………………」
……マリスタという人間を、俺は侮りすぎていたのかもしれない。
〝あなたはお母さんと同じ……いいえ。お母さんよりも大きい、大きい優しさを持っている〟
黙ってくれ、頼むから。
「…………この、」
もう、御託は一切要らない。
奴の力は付け焼刃なのだ。どうせ勝てはしない。
殺せ。こいつを。
「お人好しがッ――――!」
「怒ったって負けないんだからッ!」
再び風と共にマリスタの魔力が渦を巻き――その背後に弾丸が展開される。
回転しながら水飛沫を飛ばし続ける拳大の弾丸――――魔弾の砲手の属性付加魔法、流弾の砲手。
ならば――!
「氷弾の砲手!」
「っ!?」
詠唱破棄の呪文で、俺の背後にも弾丸が展開される。凍気を帯びた弾丸は回転しながら白く光り輝き、まっすぐにマリスタを向く。
「あ、新しい魔法っ!? そんなの、ヴィエルナちゃんの時は使って――」
「あれからもう数日だぞ? あのときと同じ俺な訳が無いだろう――!」
「く――いけぇっ!」
手を相手に翳し、奴とほぼ同時に弾丸を放つ。
先に展開していた分、若干マリスタが先だ。だが爆音――そして、
辺り一面に、濃い霧が飛び散る。
「うわ、爆発すご、げほ――って、うお危なッ!」
「凍の舞踏!」
「ふぅっ!?!――――痛ったぁ!」
霧を裂いてマリスタに突撃、振った拳を躱されたが、同時に空いた手で凍の舞踏を発動。障壁を展開していたマリスタには届かなかったものの、狙い通りに彼女の周囲の床が凍り付き――足を乗せたマリスタが大きく転倒する。
「凍の舞踏」
「うわっ、また障壁を凍らせ――って、さっきと同じ手は食わないよっ!」
凍結、実体となった障壁を魔弾の砲手で崩すも、一瞬早く動いたマリスタが障壁の内側から脱し、後を追うように着弾する弾丸をすべて躱していく。
気を取られ過ぎだ。
「ッ!? ぁぐ――!」




