「興味、やがて憧れ」
「そう。気付いてないかもしれないけど……ケイは、もう私にたくさんのものをくれてるんだよ」
〝気休め言っても何にもならないだろ。端から見ればお前は情けないし勿体ない。大貴族の生まれで金持ちで――可能性は誰よりも持っていそうなのに〟
「あんたが来るまで私は、このプレジアでただの劣等生だった。家柄があるだけ目立っちゃって、白い目で見られることもあった。でも仕方ないなって思ってたの。だって本当だったから。私は出来損ないで、大した努力もしないで。だから、当たり前じゃんって思ってた」
〝自分のスペックを自分でしっかり測れてるのは大事だと思うがな……お前のように損をしないためにも〟
「私、気にしてなかったんだ。成績悪いのも、大貴族の中でアルテアスだけが魔術師コースなのも。友達もすっかりそれに慣れちゃって、私の成績を茶化しはしても、真正面から助言してくれる人って、気が付いたらすっかりいなくなっちゃってた。でもケイは違った。私がいくら笑って誤魔化しても少しだってノってこなくて――あんたは、何度も何度も私を馬鹿にした。私は……私に『可能性』を示してくれた。新しい道があるぞって教えてくれた、そして――――そんな険しい道をあんたは、私の前で歩いてまで、みせてくれた。道の歩き方を、作り方を教えてくれた」
〝いいじゃないか。現時点で馬鹿だってことは、まだまだ伸びしろだらけってことだろ――――気休めじゃないさ、事実を言っただけだ〟
「……その背中に憧れた。いつの間にか私は、あんたの顔じゃなくて、背中を見て過ごすようになってた。どんどん遠くに行っちゃうあんたを見て、なんかムダに焦っちゃって。……でも同時に、風紀委員会の人に目を付けられても無鉄砲に突っ込んでいってるように見えるケイを、放っておけなくなった。『ケイを助けたい』――――私、はじめて、心から『今これがしたい』って思うことが出来たの」
…………英雄の鎧が、視力まで若干強化する事実に、これほど面倒を感じたこともない。
俺を見るマリスタの目。外見に似合わず静かに激情を湛えるその目に、涙が滲み光り始めたのである。




