「トモダチ」
「おっ、そんな顔もするんだね。また新しい違和感だ」
「……お前と俺の歩く道は違う。こんなことをしても俺は何も変わらない、お前自身の体を傷付けるだけだ。とっとと魔術師コースに戻れ。そして二度と俺に関わるな。血迷いもそこまでだ」
「だから私の道を勝手に決めんなっ!」
マリスタが怒り、立ち上がる。
彼女の首元を覆っていた氷が水と共に弾け、質量ごと霧散した。
「あんたと私の、歩く道が違うって。勝手に決めないでよ」
「……心底ウザい奴だな、お前。どうしてそこまで俺にこだわる?」
「何度も言わせないでって言ってるでしょ。それとも、この言い方じゃあんたには伝わらない?…………だったら言い換えてあげる。もう! 出血大サービスだから感謝しなさいよ」
マリスタが何やら恥ずかしそうに咳払いをする。
目を閉じ、大きく深呼吸して――大真面目な顔で、また俺を真っ直ぐに見た。
「私は、あんたの友達になりたい」
「……それだけ構えて出てくる台詞か? それが」
「そうだね。こんなクサい言葉、軽く聞こえて当然だって分かってる。でも、何回だって言ってやるわよ。私は、あんたと友達になりたいの。ケイ」
「そうか。俺はなりたくないな」
「いいわよ。私が勝手に思ってくだけだから」
「そんなものを友達とは言わない」
「うん。だから、これからなるんだよ」
「ならない。これまでもこれからも、俺とお前はただの他人だ」
「なる。これまでは置いてもこれからは、私があんたの友達になる!」
「お前が何を言いたいかさっぱり分からない。――何がしたいんだ。どういうつもりなんだ。俺に――」
〝けいにーちゃん〟
「……何を求めてるんだ」 黙れ。
「別に。何も?」
「お前が解らない」 今騒ぐな。
「分かるわけないじゃん。分かろうともしてないんだから」
……堂々巡りだな。
不毛に過ぎる。
「……無駄だ。無駄だぞマリスタ。お前が何をしようと、俺はお前と共には歩まない」
「別にいいって。私が一緒に歩くから。これはその一歩目になるの。だから、私は――」
目を閉じ、息を吸い込み。
再び開いたその瞳は、晧月のように青く。
「あんたに――復讐なんてさせないっ!」
風が巻き起こる。
青みがかった光を伴った風は――魔力は渦を巻き、マリスタの周囲で荒れ狂う。
バシン、と音をたて。
赤毛の背後に、複数の弾丸が現れた。
「!!」




