「痛撃」
マリスタが目を見開く。
俺は背後に滞空させていた、数十発の魔弾の砲手を掃射した。
マリスタの悲鳴を飲み込み、炸裂し続ける琥珀の弾丸。
程無く、再び精霊の壁が展開されたのを感知し、背後に装填させていた弾丸を消して――未だ魔力の残滓で霧がかった中に居るマリスタへと瞬時に接近し、腹部へ――――渾身の拳を叩き込んだ。
「ぁ――アァッ……!?!」
マリスタの悲鳴が千切れ飛ぶ。
――――何か、疼痛。
「……? ッ、」
痛みは無視。
腰を折るマリスタの首を――殴った右手でそのまま掴み上げ、締め上げる。
「ぁ、うぅあ、ァああ……っ!!!」
疼痛。
「ッ……凍の舞踏!!」
「ひぅうっ!!?? ぁあァ、ぁぃや、や……ァぁああ……ッ!?!!」
ペキペキと、放たれた凍気が人の肉に張り付いていく音が鳴る。
マリスタの首と――俺の右手が霜に覆われ、火傷のような痛みと共に凍り付いていく。
「終わりだ、マリ――」
いよいよ凍結が頭部まで差し掛かった時。
突如、マリスタが持っていた水の棒が伸びて俺の腹部を強く突き抜いた。
「ぐぅッ――っ!!」
口を突く呼吸。衝撃で、マリスタの首と共に凍結されていた右手が離れてしまう。
俺は体を捻って伸びる棒の先端から脱し、距離をとった。
前を見ると、そこには呼吸も覚束ない様子で激しく動揺し、首の凍結部位を洗濯機のように回転する水で包んでいるマリスタの姿。以前シャノリアが使っていた――――恐らく温水だろう。
あれではやがて氷も融けるか。仕留め損なった。
「っ、ふぅっ、ふっ、ふっ、ぅっ、っ……!!!!!!!」
「……………………、」
息を整えながら我を取り戻し、俺の目を見てくるマリスタ。
疼痛。
……俺は堪らず、胃の辺りを手で押さえ付けた。
なんだ、この胃袋辺りの痛みは。
「……どうして追撃、しないの」
「――何?」
「さっきまで容赦なかったじゃん。急にカワイソウにでもなったワケ?」
――――五月蠅いな。
「もしかして、私が女だから?――ナメないでよ、私を! 私は手加減をされるためにケイに勝負を挑んだわけじゃっ」
「ハッキリしたというだけだ。お前では俺の相手にはならん。少し本気を出しただけでお前は死にかけたじゃないか。死を前にしたお前の叫び声、お笑いだったぞ」
「…………あんた、そんな悪そうな顔する人だったっけ。どうにも違和感拭えないのよね」
「俺を知りもしないお前が違和感などと抜かすな」
「私を知りもしないあんたが相手にならんとか抜かすなっ」
……………………こいつ。




