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「ファンタジック・リアル」

 シャノリアの言葉通り、広大な敷地しきちを持つディノバーツていの外には、広大な樹海が存在していた。

 ディノバーツ家の――もはや城というべき――邸宅ていたくは遥か昔のディノバーツ家当主によって建てられたものであり、シャノリアは小さい頃からこの場所で育ったのだという。

 門の前には、地面と一体化するほどに風化した古びた円形の石畳いしだたみ。そこにはいかにもな魔法陣まほうじんが刻まれており、俺はマリスタとシャノリアが上に乗ったのを確認してから二人に続いた。



「あ。アマセ君、転移魔法陣てんいまほうじんのことは覚えてるの?」

「……この足元にあるものか? すまない、覚えていない」

「そう。じゃ、今回は私があなたを連れていくわね」



 連れていく……きっとこの転移魔法陣とやらの発動にも、通訳つうやくと同じく何らかの魔法を必要とするんだろう。



 シャノリアが目を閉じる。金の髪がふわりと舞い上がったかと思うと魔法陣が光り、足元から立ち上った白いオーロラに包まれるように視界が染まって、数秒のちには――目の前に、年季の入った頑丈がんじょうそうな鉄柵てっさくの門が現れていた。



 門のそばには、小さく金色の刺繍ししゅうがされた藍色あいいろのローブを着こんだ男女の姿。二人はこちらを無表情で一瞥いちべつすると、何も言わずに視線を戻した。……門番という奴だろうか。

 俺やマリスタとそう年齢は変わらなさそうだが、まとっている空気が完全に別物だ。

 ちら、と二人の腰を見る。門番なんて初めて見たが――やはりというべきか、そこには剣、武器らしきものを下げているように見えた。



「……物騒ぶっそうなのが立ってるんだな」

「実際物騒だしね。というかアマセ君、それも忘れちゃってるの?」

「ああ、そうみたいだ」

「それじゃあ、当分外出は控えたほうが良いわね」



 真面目なトーンでシャノリアが言う。



「……どんな危険があるんだ?」

「魔物、夜盗やとう、人買い、人さらい、逃亡中の犯罪者……悪そうな人たちは、大抵たいていいるかもしれないと思っておくのが賢明ね。だからこそ、こうした転移魔法陣が主な移動手段になっているのよ。まだ、リシディア全土に整備されているわけじゃないけどね」

「都会なところでは、遠いとこへの移動は大体魔法陣で済ませちゃうんだよ」



 正直、俺は少し面食らった。が、考えてみれば別に変なことでも何でもない。

 魔法といえばRPGのようなアクションに用いるものばかりだと思っていたが、そもそもその認識がかたよっているのだ。



「魔法ってのは、世界で当たり前に使われている技術じゃないのか。田舎には無いと?」

「そういうところも少なくないわ。確かに、魔法の存在は世界中の人が知っているけれど……全員が全員、魔法が必要な仕事に就くことはないでしょう? それに魔法を学んでいる人でも、自分の仕事に必要な、どこか一分野に特化した魔法を集中的に身に付ける程度で、すべての人が魔法のエキスパートとはならない。だから、魔法学校に通わずに、地元で一般の学校や、私塾しじゅくに通う人も多いの」

「というか、魔法を専門に勉強する人の方が少ないよ? じゃなきゃ大きい魔法学校が全国に三つとか、少なすぎじゃん?」

「それじゃあ、魔法学校に通う者が目指すのは」

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