表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/1260

「Interlude―26」

「だから知りませんてばぁ。ですが、最近のマリスタの動態どうたいから察するに、何かあったと見るのは容易よういです。きっと、アマセさんに近寄ってこっぴどく突っぱねられでもしたんですよ。あの方、マリスタを相当(けむ)たがっていた様子でしたし」

「よく知ってるのね。アマセ君のこと」

「知りたくもないですけどね。記録石(ディーチェ)を仕掛けてるので、見たくないものも見えてしまいますっ。あやー困りましたぁ☆」

盗撮とうさつを堂々と公言しないでよ……?!」

「あ、パールゥ。貴女あなたにだったら格安で情報をお売りしてもいいですよ。あなたとアレ(・・)がくっつく分には私、全力で応援させていただきますのでっ☆」

「お、おお応援理由に邪念じゃねんが宿りすぎだよ! さりげなく有料だしっ」

(へえ。大きく動揺したわね、パールゥってば)

「ま、そんな与太話よたばなしはさて置いて。私はあの程度で済んで、むしろ良かったと思ってますよ。これ以上深入りしたらもっと、心身ともに傷付けられていたでしょうから……まったく。だからアレには近寄るなと散々忠告したのです」

「それでいて、今朝見たアマセ君が普段とまったく変わらない様子だったのがまたすごいわよね。色んな意味で」

「また礼儀れいぎ正しい方のアマセ君だったよね。……あれを部屋で毎日練習とかしてるんだと思うと、ちょっと可愛いかも…………あっ、うそです。なんでもなぃです」



 集まった二人の視線が、パールゥのゆるい笑いを一瞬で引っ込ませた。



「毎日練習してあのザマですかぁ。きっと一流俳優(はいゆう)になれますねっ、九十年後くらいに☆」

「うーん……ていうかただ突っぱねられただけならあの子、落ち込むより烈火れっかのごとく怒りそうなものだけどね。『うがー』とか言って」

「よっぽど酷い言い方をされたのかもしれません。『胸の贅肉ぜいにくが頭にいってる』とか『赤毛なのに水属性』とか『遺伝子しか本気出してない』とか。あぁっ、可哀想かわいそうなマリスタっ」

「ナタリー、実はマリスタのこと嫌いなの……?」

「あややとんでもない、私はあの金髪の方の心を代弁しただけですってばぁ」

「この距離だからきっと聞こえてると思うんだけど……」



 三人がマリスタを見る。

 マリスタは一層クマの酷くなった目で三人を一瞥いちべつした後フラフラと立ち上がり、足取りも重く教室を出ていった。



「……ナタリーのせいだ」

「ナタリーのせいね」

「アマセさんのせいですね。あぁケイ・アマセ、なんて酷い人。今のうちに縁が切れてホントによかった」

『………………』

「……お二人してそういう目をしますけどね。既にあの子は、貴族と『平民』との無益な争いに巻き込まれているのですよ? その上『異端』だのと言われる厄介な相手と交流していて、……果てに、私にさえもどうにも出来ないことが起きてしまえば、それこそ取り返しが付かなくなってしまいます」

「…………んーー。まあ、そうとも言える、のかな」

「システィーナまでっ」

「貴族と『平民』との争いは、もう学校に居られるかどうかってところまで来てるから、それを考えるとね……友情をとって命を亡くしたり、社会的な立(学校にいら)場がなくなる(れなくなる)なら、私は付き合いをやめちゃう……かも」

「そ、そんな……」

「パールゥの気持ちも分かるから、余計にしんどいんだけどね。……何か、契機けいきがあるといいんだけど。貴族と『平民』の争いに決着をつける、キッカケみたいなものが」

「きっかけ……」

「切っ掛けと言いましてもねぇ。それだと、全面戦争の火蓋ひぶたでも切ることになってしまいそうですねぇ」

「う、うーん。そういうことになる……のかしら」



 システィーナは、改めてマリスタが去っていった教室の入口へと視線を移す。

 彼女が一人でフラフラと向かった先など、これまで放課後、ほとんどの時間をマリスタと一緒に過ごしていたシスティーナには考えつかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ