「Broken Masquerade」
突き飛ばす。
倒れたのは、俺の方だった。
「け、ケイっ」
「寄るなっ!……自分で立てる、っ……」
ガクガクと痙攣する足を床との間でつっかえ棒のようにし、関節が腑抜けないように手で膝を鷲掴み――演習スペースの壁に凭れ掛かるようにして姿勢を保つ。
「何がウルサイよ――一人で立ちたいならせめて心配されないようにしたらどうなのッ!」
「!!」
「マリスタっ」
「それだけ無茶してあれだけイジメられて、それで心配するな俺に近寄るなってのが無理な話でしょ!? 心細くないかな過ごしにくくないかなって思うでしょそのくらいも分かんないの!? それでうるさいとかうっとうしいとか、はぁ!? 意味分かんないんですけどッ!」
「――黙れよ、」
「黙るべきだったのはあんたよ!! 魔法のまの字も知らないくせに風紀委員に立ち向かったりして、ば――……馬鹿じゃないの? どうして逃げなかったのよ。わざわざ大事にしなくたって、もっと上手いやり方あったでしょ頭いいあんたなら!!!」
「黙れと言うんだ――――――殺すぞお前!!」
……比較的、自分でも驚くほど凄味のある声が出た。
マリスタの怒り顔に小さな動揺が透ける。
ナタリーの目が吊り上がり、シャノリアが目を見開き、ヴィエルナは静謐を保っている。
台無しだ。
行動を指摘され、動揺を悟られ、無意識を探られ。
…………神にでも、なりたい。
超然と泰然と、この世全てのことに動揺し得ない強靭な心が――或いは虚無が欲しい。
「け、ケイあなた」
「……尻尾を出しましたね。もういっそ、すべて吐いてしまっては如何です?」
「まさか、ホントに」
「……殺すですって? やれるもんならやってみなさいよ――――あんたは一体何者なの、ケイ・アマセッ!!!」
ああ、ああ、あああ、もう。
言ってしまえ、もう。
 




