「ケイ・アマセと天瀬圭」
……よくまあ、ここまでヴィエルナと同じことを言ってのけるものだ。
「ナタリー、」
「人間を舐めないでください、ケイ・アマセ。私達は貴方の道具でも駒でも養分でもありません」
「ああ、そうだな。すまなかった。以後猛省し、気を付けるとしよう」
いつか風紀委員にしたように謝罪し、頭を下げる。
それ以外、俺から出来ることは何もない。
「……ケイ」
「…………これだけ言われて尚もその態度ですか。成程」
「悪かったと思ってるんだ。でも、俺は今とにかく力が欲しい。だから」
「どうして力が欲しいの?」
黙っていたシャノリアが会話を遮る。
……難儀だ。
もう二度と動けなくなるようなヘマはしないと誓おう。
「あんたには言ったはずだぞ、シャノリア。俺はこの……リシディアのことを知らない。魔法のこともだ。だから」
「違うわ。……きっとそれは違う」
「……随分分かった風に言うじゃないか。あんたが俺の何を知ってるんだ」
「知ってるわよ。……私はずっとあなたの近くにいたのよ? リシディアに来てからのあなたの行動を全部見てきた。だから思うの。あなたの行動は、ただの知識欲じゃ説明がつかないことが多すぎる。先生を見くびらないで」
――こいつ。
「何に説明がつかないだと?」
「……例えば、寝たり食べたり以外の時間を、全部勉強と修行に充てていることとか」
「それは説明しただろ。俺はこのリシディアのことを知りたいだけだ」
「人との交わりを最小限にしているところもよ」
「そんなもの人の気質に依るだろ。俺に限ったことじゃ」
「それも意図的に。交わりたくても出来ない人たちとは違う。あなたは交われるのに、自分から壁を作って離れていく――――私も、きっとマリスタだって、多少なりともそう感じていると思うの」
「そのくせ勉強や修行に必要な時は、何事もなかったかのように自分から部屋に呼んだりする訳ですね、ああ末恐ろしい」
「お前、なんでそんなことを知って……」
「風紀委員とも、積極的に。戦おうと、するよね」
「全部お前達から吹っ掛けてきたケンカだろ。降りかかる火の粉を払ったまでだ」
「違う。私、見てた。から。あなたは……戦いを喜んでた」
…………何だと?
「なにを馬鹿な――――」
「私もあの場に、居た。はっきり見た――――君は笑ってたの、ケイ。オーダーガード君に、向かい合って」
〝――どういうつもりなの、それ。ねえ。アマセ君〟
〝おいおい、早く止めろよザードチップ先生! あいつ、きっと頭がイカレやがったんだ。早く止めねぇと何するか分かんねぇぞ!〟
――そういえば、そんなことを奴らに言われた記憶がある。
その時俺は、まさか……笑っていたのか?




