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「内緒――――少女は静観を止め」



「…………!!!」



 無意識か、背後のココウェルが俺のローブのフードを握る感覚。

 まだうずく右目からそっと手を離しながら、真っ白な頭でココウェルの前に立つ。



 状況はもう終わりだ。

 いつバンターが目の前に現れ、いつ殺されてもおかしくない。



 だが一つだけ分かったことがある。

 あいつのあの、急激な力の伸びは呪


                        い、


「ケイッッ!!!」



 ――いつの間にかココウェルが遠くにいた。

 床を吹き飛び壁に激突、拳大こぶしだいの瓦礫が頭をしたたか打つ状況の中で、俺は何とかそれだけ知覚し。



 バンターに取られたココウェルの右腕が握り潰される音と悲鳴を、倒れたまま聞いた。



「ああああああああああっっ……!!!!!!」

「かわいい声

  よく          似合うわ

 こんなにも死を望まれる罪な人」

「……死がッッ、」

「ココウェルッ!」

「死が、贖罪になるのなら……いくらでも死にましょう。でもわたしにはどうしてもそう思えないッ……」

「……思  えな、

?」

「わたしが死んで、リシディアが滅んで……それでどうなるというのです。今を苦しむ無数の人々が救われ「カガイシャノ キサマニ ツグナイノ ホウホウヲ カンガエル ケンリガ アルト ホンキデ オモッテイルノカ?」――――――――――、」

「……!?」



 ……ココウェルと二人して、その顔を見る。

 先ほどまで妙な口調で薄い笑いを浮かべていた屈強な大男は今――――自我を取り戻したかのように悲愴な顔に、二筋の涙を流していた。



「わ……あ。わたしは、そんなっ……そんなつもりで」

「死ねよ。潔く死を選べよ――ッッ被害者が死ねと言うのだから死ねよッッッ!!!!!!!!!」



 ――――あまりにも正しく響く、間違った言葉。

 それがこの耳に正しく聞こえてしまうのは――



「……すみません。すみませ――――ごめんなさい。ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……!!」



 ――違うそんなことを考えてる場合じゃない。



 立て。

 歩け。

 走れ。

 お前の魔力はまだ尽きてない。

 まだまだ全然、ほとんど戦えてすら、いない、上に――



〝足りないわ足りない足り足り足り足りたりたたりりりりりりりりりりりりり



          、ィ〟



「――――――――、」

「今更謝るな。死ね。もういいから死ね。殺してやるから死ね」

「ごめんなさいっ……本当に、本当に――」

「ッ、ココウェル――」



 土下座したココウェルの頭部へ。



バンターが、何の躊躇ちゅうちょも無く片足を振り上げる。



「昏き涅槃に堕ちながら――奪った命に永劫呪われ続けろォッ!!!!」

「くっ――――そぉぉぉおおおおおおおッッ――――――!!!!!!」



 地の砕ける音。



 誰かの叫びを聞きながら、俺は目を閉じていた。



 ――故に、気付くのが遅れた。



「………………………………、っ……?」



 ――聞こえた。確かに聞こえた。



 頭が潰れる(・・・・・)音でなく――地面が砕ける(・・・・・・)音だけが。



『!!?』

「ッ……」



 強まってきた呪いのうずきに押され、思わず目を開ける。

 そこに立っていたのは、



「貴様――――」



 音速で以て、ココウェルを抱えた人物に拳を放つバンターと。



「――――――か、はッ……!!?」



 ――瞬時にその背後に回り込み、バンターを蹴り飛ばしたリリスティア(・・・・・・)・キスキル(・・・・・)の姿。



「……は?」

「――私はこの国を守りたい。それに何より、キミを守りたい。だから、」



 リリスティアはココウェルを下ろし。



 小さく微笑ほほえみ、人差し指を口に当てて。



「この戦いはないしょ――」



 最強の大男に、たった一人で対峙たいじした。



「私が彼を倒したことは、三人だけのないしょ」


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